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ヒトロタウイルスの人工合成に世界で初めて成功-藤田医科大ら

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2019年02月14日 PM12:45

増殖能力が低くサルロタウイルスの手法では合成困難

藤田医科大学は2月12日、ヒトロタウイルスの人工合成に世界で初めて成功したと発表した。この研究は、同大学の河本聡志講師、福田佐織研究補助員、谷口孝喜名誉教授、村田貴之教授らの研究グループが、北里大学の小山ちとせ研究員、片山和彦教授と共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Virology」電子版に2月6日付で掲載された。


画像はリリースより

試験管内で合成したウイルス遺伝子を細胞に導入して、感染性ウイルスを人工合成する技術を「リバースジェネティクス(RGS)」と言う。乳幼児に重篤な下痢症を引き起こすロタウイルスは、安全なワクチンや治療薬を開発するため、リバースジェネティクスの構築が切望されてきた。しかし、ロタウイルスのリバースジェネティクス構築は困難を極めた。なぜなら、ロタウイルスはウイルス内部に11本もの遺伝子断片を持つため、人工合成した11種類の遺伝子すべてを、同時に1つの細胞の中に導入しなければならなかったからだ。

2017年に、増殖能力が極めて高いサルロタウイルスを用いて、最初のリバースジェネティクスが開発された。しかし、このシステムでは、動物ウイルス由来のFASTタンパク質と牛痘(ワクシニアウイルス)由来の酵素などを発現する別の遺伝子を同時に細胞に導入してロタウイルスの複製を助ける必要があり、純粋にサルロタウイルスの遺伝子のみではシステムが動かなかった。また、ヒトロタウイルスの試験管内実験系での増殖能力は、サルロタウイルスの100分の1程度であり、このシステムを利用しても上手くいかなかった。

2種類の遺伝子を他の3倍多く細胞に導入したことで成功

ヒトロタウイルスは、病原性、レセプターおよび増殖して細胞から出てきた新生ウイルスに感染力を持たせるための前処理条件などが、サルや他の動物ロタウイルスとは異なる。ヒトロタウイルスを正しく理解し、ヒトロタウイルスのワクチンや治療薬を開発するためには、動物のロタウイルスではなく、ヒトロタウイルスのリバースジェネティクスが必須だ。

研究グループは2018年に、動物ロタウイルスの11本の遺伝子のうち、2本(非構造タンパク質NSP2とNSP5)を他の9本の3倍量にして細胞に導入することで、従来の1,000倍程度まで効率良くロタウイルスを人工合成できることを発見した。そこで、今回の研究で、ヒトロタウイルスの11本の遺伝子のうち、NSP2とNSP5の2本を他の9本の3倍量にして、さらに、ロタウイルス胃腸炎患者便中のウイルスを効率良く分離する技術(高濃度のトリプシン添加と回転培養)を利用することで、ヒトロタウイルスを人工合成することに成功した。

この研究成果により、世界で初めてヒトロタウイルスの遺伝子を自由自在に改変することが可能となった。さらに、今回構築されたヒトロタウイルスのリバースジェネティクスは、ロタウイルスの遺伝子のみで稼働し、ロタウイルス以外の遺伝子産物を必要としない。自然なヒトロタウイルスの感染、増殖、病原性発現の機構を再現して研究できるので、ヒトに対する安全性に優れた次世代ロタウイルスワクチンや治療薬の開発が飛躍的に進むものと期待できると研究グループは述べている。

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