漢方製剤に配合されるカンゾウが引き起こす「偽アルドステロン症」
名古屋市立大学は2月7日、漢方薬を使用したときに高い頻度で発症する副作用の偽アルドステロン症が、生薬カンゾウに含まれるグリチルリチン酸の代謝産物18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸により引き起こされる可能性が高いことを発見したと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科の牧野利明教授、石内勘一郎講師が、第一薬科大学漢方薬学科の森永紀准教授、千葉大学医学部附属病院和漢診療科の並木隆雄臨床教授、亀田総合病院東洋医学診療科の南澤潔部長と共同で行ったもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に公開されている。
画像はリリースより
漢方薬が引き起こす頻度の高い副作用として、医療用漢方エキス製剤の約7割に配合されているカンゾウによる偽アルドステロン症があるが、発症には大きな個体差があり、予測が困難だ。ほとんどの偽アルドステロン症は軽症で済み、カンゾウの摂取を中止すれば緩解するが、高齢者の場合や発見が遅れた場合、不整脈などをきたして重篤な状態に至ることがある。そのため、早期発見が求められている。
これまで、偽アルドステロン症の原因物質は、生薬カンゾウに含まれているグリチルリチン酸(GL)の代謝物であるグリチルレチン酸(GA)と3-モノグルクロニルグリチルレチン酸(3MGA)であると考えられてきた。
患者の血清から18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸を高濃度で検出
研究グループは、Mrp2 を遺伝的に欠損するラットであるEisai Hyperbilirubinemia Rats(EHBRs)にGA を投与しながら飼育。その結果、正常なラットにカンゾウを投与したときは、血液中にはその代謝物としてGAが現れたが、EHBRsでは、正常な場合では血液中や尿中に現れないGLの代謝物が出現した。研究グループはそれらの代謝物を同定。その後、偽アルドステロン症を発症した患者の血清から、EHBRsで出現した代謝物のひとつである「18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸」が、GAよりも高濃度で検出された。
このことから、漢方薬を使用するときに、副作用を予防するためのバイオマーカーとして、18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸が利用できる可能性が高いことを発見。さらに、血中、尿中から18β-グリチルレチニル-3-O-硫酸を簡単に測定できるELISA法も開発したとしている。
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