骨髄移植後肺障害による末期の呼吸不全でECMOを長期装着
東京大学は2月8日、骨髄移植後肺障害のため脳死肺移植待機中であった体外式膜型人工肺(ECMO)長期装着中患者の脳死肺移植実施症例について、その経過を発表した。この研究は、同大医学部呼吸器外科の中島淳教授ら、同心臓外科の小野稔教授らと、日本医科大学付属病院 外科系集中治療科の市場晋吾部長らにより行われた。
患者は20代男性で、骨髄移植後肺障害のため末期の呼吸不全状態となり、気管切開を行い、人工呼吸器を使用しながら自宅および地元の病院で脳死肺移植待機を続けていた。2018年4月、呼吸状態が悪化し人工呼吸器では生命の維持が困難となったため、ECMOを装着したうえで日本医科大学付属病院に搬送、同院外科系集中治療科でECMOによる集中治療管理が行われていた。
日本の提供臓器不足が浮き彫りに
研究グループは、ECMO装着から5か月近くが経過した9月に適合する脳死ドナーが出現したため、同大医学部附属病院にて脳死両側肺移植を実施。術後の経過はおおむね良好で、移植後3か月が経過したこの程、リハビリテーションを行うために地元の病院へ転院した後、自宅へ退院となった。
これまで、欧米でもECMO装着患者の肺移植は行われてきたが、肺移植を前提としたECMOの長期装着はさまざまな理由で大きな困難を伴うため、通常は長くて1か月程度が限界とされていた。今回のケースのように、これほど長期にECMOを装着したうえで肺移植に至り生還した例は国内では初めてであり、世界的にも報告例がほとんどなく、極めて稀だという。
今回の成功事例が日本の医療技術の高さであるとする一方、肺移植に至るまでに長期のECMO管理が必要であり、またこれにより肺移植自体も非常に高度な技術を要するものとなった大きな理由は、日本における圧倒的な提供臓器不足にあり、この点について研究グループは、「これは日本の臓器移植の大きな課題といえる」と述べている。
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・東京大学 プレスリリース