京都府薬剤師会の薬薬連携事業として、南丹市と京丹波町の薬局が所属する船井薬剤師会と協力して試行的に始めたもの。医師の合意のもと具体的な手順を盛り込んだプロトコールを同院で策定。薬局と確認書を交わして事業を開始した。手上げ方式で現在、12薬局がこの事業に参加している。
薬局薬剤師は、同院でカペシタビンを処方されたがん患者に対し、1週間に1回程度電話等で連絡をとって、服薬や生活の状況、副作用の発現状況などを聴き取る。患者の皮膚の状態を10項目の質問で把握する「DLQI」を活用し、手足症候群発現の有無やその程度を評価。痛みがあるなどグレード2に達したと判断した場合、事前に処方されたステロイド外用薬の使用開始を患者に指示する。状況に応じて受診勧奨も行う。
その上で、これらの状況を「薬薬情報共有レポート」に記載し、同院薬剤部にFAXで送信する。同院の薬剤師はレポートに記載された情報を確認して主治医に報告や提案を実施。次回の診察や治療に反映してもらう。
手足症候群は、手や足がひりひりしたり、腫れたり、ひび割れや痛みが生じたりするもの。保湿剤で乾燥を防ぎ予防するが、それでも症状が出現した場合にはステロイド外用薬を塗って対応する。対応が遅れると日常生活に影響が及んだり、症状が重篤化したりして、患者のQOLが低下する。治療を中断するような事態になれば、患者に不利益が生じてしまう。
南丹地域では以前から薬薬連携体制が構築されており、薬局薬剤師は、副作用発現などの状況をレポートに記載して同院にFAXで送信したり、受診勧奨を行ったりしていた。しかし、患者がステロイド外用薬を入手するには、新たに医師の診察を受ける必要があり、対応が遅れることが課題になっていた。
PBPMにあたって、初回診察時に医師は予めステロイド外用薬を処方することを徹底。保湿剤とステロイド外用薬の処方が医師のオーダーから漏れていた場合、病院薬剤師がそれらのオーダーを代行で入力できることもPBPMに盛り込んだ。その上で薬局薬剤師にステロイド外用薬の開始指示を委ねることで、早期対応を実現させた。
■「やってよかった」と担当者
同院薬剤部の武田智子氏は「手足症候群を早期に発見、早期に対応して次回の診察までに悪化させず、治療を継続できるようにするのが事業の目的」と言及。「予め取り決めておかなければ、医師に問い合わせることなく、薬局薬剤師が勝手にステロイド外用薬の開始を指示することはやりにくい。PBPMによって事前の問い合わせは不要にし、開始指示を出せるようにした」と話す。
実際に昨年12月までの4カ月間で、二十数人の対象患者のうち数例で薬局薬剤師がグレード2の手足症候群を発見。ステロイド外用薬の塗布開始を指示した。その後、悪化することなく改善し、治療を継続できたという。「やってよかったというのが第一印象。早期に発見し、早期に対応できた」と武田氏は語る。
この事業の基盤にあるのが南丹地域での薬薬連携体制だ。「2013年7月から薬薬連携研究会が発足し、年3回の研修会を実施している。14年3月からは薬薬情報共有レポートの運用を開始した」と同院薬剤部長の和田淳氏。「さらに踏み込んだ薬局薬剤師の介入を模索する中で今回、薬薬連携にもPBPMを活用した」と振り返る。
今後は対象薬剤の拡大も視野にある。「医師や看護師から取り組みをすごく評価してもらっている。他の薬剤でも実施してほしいと言われる」と武田氏。皮膚の異常は薬局薬剤師でも判断しやすいため、各種分子標的薬のざ瘡様皮疹などが候補になるという。