命を脅かす肺疾患の発症メカニズム解明と創薬標的の特定を
ドイツのバイエル社と京都大学は1月31日、呼吸器疾患の特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis: IPF)の新しい創薬標的を特定するための戦略的研究提携を行うことに合意したと発表した。
IPFは全世界で約500万人が患っている、生命を脅かす慢性肺疾患。時間の経過とともに肺の組織が厚く硬くなり(線維化)、しだいに肺機能が低下していく。肺の組織が厚くなるにつれて、肺から血流へのガス交換の効率が低下し、脳やその他の臓器への酸素の供給が不足する。肺の線維化につながる要因はこれまでにも示されているが、IPFの直接的な病因は今のところ不明。そのため「特発性肺線維症」と呼ばれている。IPFでは、数日あるいは数週間で症状が急激に悪化する「急性増悪」が起こり得る。この急性増悪のリスクを減らすことがIPF患者に対する重要な治療目標とされている。今回の研究提携の目的は、疾患につながるメカニズムを解明し、創薬標的を特定することだ。
双方の専門知識を組み合わせて新しい治療法を探索
バイエルと京都大学は今後、新しい創薬標的の特定のための共同研究活動を提携合意のもとで実施。バイエルは提携の成果の独占的使用の選択権を所有する。なお、契約の金銭的条件については非開示だ。
今回の提携では、京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学の佐藤篤靖助教が京都大学で発見し得た専門知識、特にIPFの病因における上皮細胞の役割をベースとし、バイエルの創薬および開発の専門知識を組み合わせて共同開発していく。京都大学とバイエルは、新しい治療オプションを特定する仮説を共同で設定し、その仮説を検証するために人材、インフラ、独自のテクノロジーを双方に提供するとしている。
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・京都大学 ニュースリリース