75歳以上の後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析
東京都健康長寿医療センターは2月1日、東京都の後期高齢者の約8割が2疾患以上の慢性疾患を併存、約6割が3疾患以上の慢性疾患を併存していることをレセプトデータから明らかにしたと発表した。この研究は、同センター研究所の石崎達郎研究部長、光武誠吾研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、米国疾病対策予防センター(CDC)が出版している国際科学雑誌「Preventing Chronic Disease」に掲載されている。
複数の疾患が併存している状態を「多病」と呼ぶが、患者の医療ニーズ(受診や検査・治療)を複雑にするだけでなく、患者の心身機能やQOLの低下、ひいては医療費増大に重大な影響をおよぼす。国内では、高齢化の進展によって多病患者の増加が報告されており、高齢患者の診療では、併存疾患の考慮が欠かせない。
しかし国内外を問わず、科学的根拠に基づいた診療ガイドラインの多くは、多病患者への考慮・対応が十分ではない。多病を考慮した診療ガイドラインを開発するためには、多病の有病状況や、頻度の高い併存疾患の組み合わせの把握が必要となる。併存する2疾患の組み合わせに関する研究は海外で数多く報告されているが、3疾患の組み合わせに着目した研究は不足している。
最も多い組み合わせ、男性では「高血圧・潰瘍性疾患・虚血性心疾患」
研究グループは、東京都の75歳以上の後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析し、多病の実態や頻度の高い3疾患の組み合わせを把握するとともに、多病に関連する要因を分析した。
その結果、東京都の後期高齢者の約8割は2疾患以上の慢性疾患が併存し、3疾患以上の疾患を併存した割合は約6割だった。頻度の最も高い3疾患の組み合わせは、男性では「高血圧・潰瘍性疾患・虚血性心疾患」(12.4%)、次いで「高血圧・脂質異常症・潰瘍性疾患」(11.0%)、女性では「高血圧症・脂質異常症・潰瘍性疾患」(12.8%)、次いで「高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患」(11.2%)だった。
また、3疾患の組み合わせで頻度が上位15位までの中で、1年間の平均外来医療費が最も高かった組み合わせは、男性では「高血圧・潰瘍性疾患・悪性新生物」(827,644円、7位:7.6%)、次いで「高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患」(762,176円、10位:7.4%)、女性では「高血圧・潰瘍性疾患・不眠症」(682,811円、6位:8.0%)、次いで「高血圧・潰瘍性疾患・脊椎/関節疾患」(674,710円、2位:11.2%)だった。多病を抱えやすい高齢者の特徴は、男性、85~89歳、医療費が1割負担、在宅医療を受けている、外来受診施設数が多い、入院回数が多い、であった。
今回の研究で示された高頻度の3疾患の組み合わせは、多病を考慮した診療ガイドラインを作成する際、優先的に考慮すべき併存疾患の組み合わせを選択するための手掛かりとなる。また、外来受診施設数が多い人ほど多病の割合が多かったという結果は、多病を抱える人の診療内容・処方内容を、施設を越えて共有できる医療システムの構築が必要であることを示唆している。
▼関連リンク
・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース