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ALK陽性肺がんの重複変異を多数発見、変異予測も可能性に期待-がん研ら

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2019年02月01日 PM01:00

重複変異によるALK阻害薬の耐性克服法を探る

がん研究所は1月30日、ALK融合遺伝子陽性肺がん()において、‐ロルラチニブ逐次治療後の耐性機構として新規ALK重複変異体を複数発見し、また、1塩基変異のみでロルラチニブ耐性を示すALK-L1256F変異を発見したと発表した。この研究は、同研究会がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長、東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡田康太郎大学院生、京都大学大学院医学研究科の奥野恭史教授、同荒木望准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、Lancet誌とCell誌が共同でサポートするオープンアクセス誌「EBioMedicine」に1月18日付で公開された。


画像はリリースより

肺がんは、日本で一番死亡率の高いがん種で、その8割以上を占める非小細胞肺がんの3~5%が、ALK陽性肺がん。ALK陽性肺がんに対しては、ALKチロシンキナーゼを阻害する薬剤が有効で、日本では、これまでに4つのALK阻害薬が承認され臨床応用されている。中でも、一次治療薬として「アレクチニブ」が最も多く使用されているが、治療後、数年以内にがん細胞が薬剤耐性化し、がんが再発することが問題となっていた。アレクチニブ耐性後に、アレクチニブ耐性変異に対しても有効な「」で逐次治療する方法があるが、さらに耐性を生じること(重複変異)が懸念されている。しかし、その克服法はほとんど明らかになっていなかった。

効果的な薬剤をコンピュータで予測できる可能性も

今回研究グループは、がん研有明病院において十分なインフォームド・コンセントを受けたALK陽性肺がん患者のアレクチニブ耐性腫瘍から培養細胞株を樹立し、ALKの耐性変異の有無を確認した。この細胞やマウスを用いたさまざまな実験により、ALK陽性肺がんにおいて、アレクチニブ耐性変異G1202R変異やI1171N変異後のロルラチニブ治療に耐性となるメカニズムとしてG1202RやI1171Nに新たに変異が蓄積する重複変異を多数発見した。また、L1256F単独変異が、ロルラチニブに高度耐性を付与する一方でアレクチニブには高感受性であることを発見した。さらに実験を進め、ロルラチニブ耐性を示すALK重複変異の大半は、既に臨床で使用されているALK阻害薬(、アレクチニブ、セリチニブ、brigatinib)が再び効果的に戻っていること、また、あらゆるALK阻害薬に耐性を示すG1202R+L1196M重複変異体には、ABLチロシンキナーゼ阻害剤のAG-957やAdaphostinが効果的であることを発見した。

さらに、「京」を用いて、従来の耐性変異や今回発見された重複変異と各ALK阻害薬との結合親和性を「MP-CAFEE法」という計算法で算出したところ、実験的なデータとシミュレーションで求めた結果に高い相関があった。これは、コンピュータシミュレーションによる耐性変異予測の可能性を示している。

今回の研究から、さまざまなALK阻害薬耐性機構と耐性克服法の候補が示された。また、治療耐性時に耐性機構が明確にできれば、そのメカニズムに合わせた更なる治療の可能性が示された。将来的にシミュレーションの予測精度が向上すれば、コンピュータ内で耐性変異と効果的な薬剤の予測が可能となることが期待されると研究グループは述べている。

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