バイオメディカルクラスターの形成に寄与するFBRI
ノバルティス ファーマ株式会社は1月29日、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)医療である「CTL019」(国際一般名:tisagenlecleucel、海外における製品名:Kymriah(R))の治験用製品の製造に関して、神戸医療産業都市推進機構(FBRI)への技術移転を完了したと発表した。
CAR-T細胞医療であるCTL019は、患者自身の細胞を用いた免疫細胞療法のひとつ。白血球アフェレーシスという特殊な血液ろ過プロセスを通して、患者一人ひとりから採取されたT細胞は、ノバルティスの製造施設で、がん細胞やその他の細胞の表面に発現するCD19抗原を特異的に認識し攻撃するよう、遺伝子導入により改変される。改変されたT細胞(CAR-T細胞)が患者の血液に投与されると、CD19を認識し攻撃する際に伝わる刺激により、CAR-T細胞自身が患者の血液内で増殖することから、治療は1回の投与のみで行われる。ノバルティスは、CTL019を含むCAR-T細胞医療の研究・開発・製品化を目的として、2012年にペンシルベニア大学とがん治療の研究に関する国際的な協力契約を結んでいる。
FBRIは2000年3月の発足設立以降、神戸医療産業都市の推進母体として、先端医療の実現に資する研究開発および臨床応用の支援、次世代医療システムの構築などの取り組みを通じ、神戸バイオメディカルクラスターの形成に寄与している。神戸医療産業都市に集積した約350の企業や研究機関・大学、医療機関などの連携・融合により、革新的な医療技術の開発や神戸経済に貢献するイノベーションを創出している。
将来的なグローバル製造戦略拠点としての評価・検討を実施
ノバルティスは、世界規模でのCAR-T細胞製造拠点の確立を推進。米国・ニュージャージー州モリスプレーンズにある自社製造施設のほか、世界各地での生産体制拡大に取り組んでおり、今般、医薬品受託製造開発機関(CDMO)としてFBRIと提携し、CAR-T細胞製造に関する技術移転を実施したという。今後は治験用製品の製造を通じて、将来的なノバルティスのCAR-T細胞医療のグローバル製造戦略拠点としての評価、検討を行っていくとしている。
CTL019は2017年8月、米国において、小児を含む25歳以下の再発・難治性急性リンパ芽球性白血病(ALL)を適応症として、初めて承認を取得したCAR-T細胞医療であり、2018年5月に2つ目の適応症である成人のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する承認を取得。また2018年8月、欧州において、小児・若年成人のALLおよび成人のDLBCLに対する販売承認を取得した。その後、カナダ、スイス、オーストラリアでも同様の適応で承認を取得している。
日本国内では2018年4月、小児を含む25歳以下のCD19陽性再発又は難治性のB細胞性ALL、および成人のCD19陽性再発または難治性のDLBCLの治療を対象として、CTL019の製造販売承認申請を実施。なお、2016年5月には、CD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病、CD19陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、CD19陽性濾胞性リンパ腫の適応に対して、希少疾病用再生医療等製品の指定を受けている。
▼関連リンク
・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース