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血清から抗体を効率的に分離・精製するセラミックス粒子を開発-産総研ら

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2019年01月30日 PM01:00

抗体医薬品のコストダウンに向け

産業技術総合研究所は1月28日、血清から抗体を効率的に分離・精製するためのセラミックス粒子を開発したと発表した。この研究は、同日本特殊陶業-産総研ヘルスケア・マテリアル連携研究ラボが、日本特殊陶業株式会社と共同で行ったもの。研究成果は1月31日~2月1日に東京ビッグサイトで行われる「nano tech 2019第18回 国際ナノテクノロジー 総合展・技術会議」で発表される。


画像はリリースより

近年、副作用が少ない次世代の医薬品として「」が注目されている。抗体医薬品は複数の工程を経て製造されるため、製造コスト高や抗体医薬品の薬価高騰につながっている。また、「クロマトグラフィー工程」では、抗体と特異的に結合する高価なタンパク質(プロテインAなど)を用いて抗体を分離・精製するアフィニティークロマトグラフィーが最も利用されているが、これもコスト高騰につながっており、クロマトグラフィー工程を低コスト化できる技術の開発が望まれていた。

高価な回収用タンパク質を用いずに効率良く回収

今回開発したクロマトグラフィー用担体として利用できる多孔質セラミックス粒子の特徴は、高価なプロテインA分子を用いない点。この粒子は、抗体との高い結合活性を実現するために、抗体サイズと同程度の孔径(10nm程度)とした多孔質ジルコニア粒子(粒子サイズ:~100 µm)を用いた。この粒子は比表面積と細孔容積が高い。また、従来のプロテインAを利用したクロマトグラフィーでは、抗体を回収する際にpH2~4の酸性溶液を用いる必要があり、これが抗体の凝集や変性を引き起こすため、収率低下などにつながることも問題となっていた。今回開発した粒子では、抗体との結合選択性を向上させるために、リン酸を含む有機官能基を用いて粒子の表面修飾を行った。ジルコニア粒子表面のリン酸と抗体との緩やかな結合を利用するので、温和な条件(pH 7付近)で抗体を回収でき、凝集や変成を起こさない利点もあるという。

研究グループは実際に、開発した粒子を充填したカラムを作成し、血清中に含まれる主成分タンパク質である抗体(IgG)に、除去されるべきタンパク質としてアルブミン、トランスフェリンを同量含む混合溶液から、抗体(IgG)の選択的な回収を試みた。結果、従来のプロテインAを用いたクロマトグラフィー用担体と同程度の時間で処理可能であった。3種類のタンパク質のうちで、抗体(IgG)だけが、開発した多孔質ジルコニア粒子に対して非常に高い吸着量(143µg/mg)を示し、アルブミンやトランスフェリンの吸着量の10倍程度であったことから、多孔質ジルコニア粒子が、抗体(IgG)に対して優れた吸着選択能力を示すことが確認されたという。

今後は、抗体の分離・精製の効率向上のため、開発したセラミックスの粒子サイズの検討や改良を行うとともに、カラム形状や抗体回収液などのクロマトグラフィーの条件を最適化し、実用化に向けてユーザーへのサンプル提供を進めていく予定としている。

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