公的に承認された有効な治療薬がないエボラ出血熱
北海道大学は1月28日、エボラ出血熱治療薬の開発に必要な支援金の募集を、READYFOR株式会社が運営するクラウドファンディングサービス「Readyfor」にて、2月1日より開始すると発表した。これは、同大人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人教授が、「致死率最大90%にもおよぶ『エボラ出血熱』治療薬開発の一歩へ」という募集タイトルで実施するもの。目標金額は370万円、募集期間は2019年2月1日~3月29日23時まで。
画像はリリースより
エボラ出血熱は1976年に初めて集団感染が確認されて以降、アフリカで散発的な流行を繰り返している致死率の非常に高い感染症。2013年から2016年にかけての西アフリカでの流行では、1万人以上が死亡した。しかし、エボラ出血熱には使用が公的に承認された有効な治療薬がない。未承認薬の抗体医薬が最も効果があるとされ、感染者への投与が試されているが、非常に高価である上に、低温での保存が必要なため、アフリカの流行地で使用するのには限界があるという。
また、ヒトやサルに感染するエボラウイルスは5種類あり、そのうち1種類に効く抗体をもとに治療薬の開発が試みられているが、5種類全てに効く抗体は発見されていない。
安価で常温保存が可能な飲み薬の開発を目指し
北大人獣共通感染症リサーチセンターは、世界で初めてエボラウイルス5種類全てに効く抗体を発見。さらに、その後の研究により、この抗体と同じ作用を持つ化合物を発見した。エボラの流行拡大を阻止するためには、今回発見した「治る可能性が高い化合物」を可能な限り早く「薬」にする必要がある。この化合物は、エボラウイルスが細胞に侵入する過程を強力に抑える低分子化合物で、基礎研究段階を終えて非臨床試験段階に入ろうとしている。非臨床試験をクリアすれば、次はヒトへの投与(臨床試験)となるが、必要な研究資金が不足しているため、クラウドファンディングサービスにて支援金を募集することになったという。
ウイルス感染を防ぐ手立てとして「ワクチン」と「薬」がある。ワクチンは感染予防に有効だが、いつどこで発生するか予測できないエボラにおいては、全てのアフリカ在住者に接種することが難しく、使い道が限られてしまう。そのため、感染した人を治療する薬(抗ウイルス剤)の方が現実的と考えられる。
研究グループは「安価で長持ちする飲み薬(抗ウイルス剤)であれば、医療設備や医師が十分でないアフリカでの普及にも適している。飲み薬が完成すれば、最もエボラウイルスに近い場所に住んでいるアフリカの人たちが、いつでも治療薬を飲める世の中への第一歩になる」と、述べている。
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・北海道大学 プレスリリース