■子宮頸癌検診の啓発目指す
生活者の健康づくりへの意識を変える活動を支援しているスマートヘルスケア協会は、子宮頸癌検診の未受検者向けに薬局を活用したHPV(ヒトパピローマウイルス)の自己チェックサービスを4月から本格始動させる。子宮頸癌検診の受診率が低迷する中、薬局やドラッグストアが地域住民にHPV検査キットを販売し、子宮頸癌検診の重要性を啓発することで、適切な受診勧奨を通じた検診受診率の向上を目指す。同協会は、薬局で地域住民に十分な情報提供を説明ができるよう管理者研修会を実施し、「健康応援スポット」(仮称)として認証する制度を設ける。認証薬局を自己チェックサービスを利用・相談できる地域の窓口と位置づけ、健康サポート活動の一つとして薬局による一次予防の取り組みを推進していきたい考えだ。
子宮頸癌は、妊娠、出産を経験する20~40歳代女性がハイリスクにもかかわらず、癌検診の受診率が低いことが課題になっている。子宮頸癌で死亡する女性は年間3000人に達し、特に重要なライフイベントを迎える子育て世代の女性を直撃することから、社会的な損失も大きいとされる。
ただ、日本では検診受診率が低く、HPVワクチンの副反応問題も存在することから、同協会は子宮頸癌検診を受診していない若年女性の健康を守るため、薬局で子宮頸癌の原因とされるHPVの有無を検査し、子宮頸癌の啓発と検診の受診率向上を目指す自己チェックサービスを開始することにした。
具体的には、同協会が薬局薬剤師に対し、子宮頸癌の適切な説明や癌検診の正しい理解、受診勧奨を行えるための研修を実施。自己チェックサービスを提供する管理者のいる薬局を認証し、「健康応援スポット」として施設登録を行った上で、HPV検査の自己チェックサービスを提供できる体制を作る。
健康応援スポットに認証された薬局は、地域住民が健康増進のための自己チェックサービスを安心して利用・相談できる窓口と位置づけ、子宮頸癌の啓発や検診の受診勧奨によって医療機関や行政に橋渡しする役割を担う。
薬局は、HPV検査キットの在庫を持つ必要がないのも特徴。店頭で金券扱いの「店頭販売用カード」を販売する仕組みで、薬局はHPV検査キットの流通やサービスの支援を担うナラティブトラスト社と契約すると、店頭販売用カードと啓発用のパンフレットなどの販促資材が送付され、自己チェックサービスの提供が始まる。HPV検査キットの販売価格は自由としているが、同協会では相談対応費用込みで7000円前後を推奨している。
カードを購入した地域住民はWeb上で申し込み、キットが郵送されて自己検査を行う流れになる。検査結果の見方が分からなかったり、不安に感じたことがあれば薬局に相談に来てもらい、薬剤師が説明や指導を行うという流れだ。必要に応じて医療機関の紹介や受診勧奨などにつなげる。
同協会の岡崎光洋代表理事は「健康サポート薬局の取り組みが求められる中、子宮頸癌の啓発と自己チェックサービスは、新たな活動の一つとして地域住民への貢献につながるのではないか。全国に5万軒以上ある薬局という社会インフラを使わない手はない」と狙いを話す。先行コストの負担なしで取り組めることもメリットで、処方箋調剤に依存しない新たな収益源にもなりそうだ。
世界最大のインターネット通販サイト「アマゾン」でもHPV検査キットが販売されており、産婦人科専門医から憂慮の声も出ているという。それだけに、地域住民が安心して相談できる窓口として薬局薬剤師の支援を得られる意義は大きく、日常業務の合間や休日の健康フェアでの対応が期待されている。
既に同協会は、昨秋から予備的に管理者研修会を開催しており、4月から自己チェックサービスを提供するための研修を本格的に始めたい考え。認証申請を希望する薬局は管理者研修を受ける必要があり、受講料は1万5000円。別途、「健康応援スポット」の施設認証の審査料として2万円、初回の認証登録料として2万円の費用がかかる。