アレルギー疾患の炎症増悪に深く関与する2型自然リンパ球
国立成育医療研究センターは1月25日、ビタミンAの代謝物質であるレチノイン酸が、アレルギー性炎症の増悪に関与する2型自然リンパ球を炎症抑制機能を持つ制御性自然リンパ球に変換することを発見したと発表した。この研究は、同センター研究所免疫アレルギー・感染研究部の森田英明アレルギー研究室長、松本健治部長らの研究グループが、Swiss Institute of Allergy and Asthma ResearchのCezmi Akdis教授らと共同で行ったもの。研究成果は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されている。
一旦発症したアレルギー疾患を完全に治すことができる治療は、現時点では存在しないため、詳細な病態の理解に基づく新たな治療法の開発が期待されている。特に慢性的な炎症が病態の主体とされている気管支喘息やアトピー性皮膚炎では、慢性炎症を抑制する機構の解明が必須であると考えられている。
近年、理化学研究所の小安氏、茂呂氏らによって新たに発見された2型自然リンパ球は、アレルギー疾患における炎症の増悪に深く関与していることが明らかにされ注目を集めている。
制御性自然リンパ球に変化し、過剰な炎症を制御
今回の研究では、アレルギーの新たな治療法開発を目的として、2型自然リンパ球の活性を抑制する方法の開発を目指した。ヒト2型自然リンパ球をレチノイン酸とIL-33で刺激すると、抑制性のサイトカインであるIL-10を産生する制御性自然リンパ球に変化することが判明。このIL-10産生性制御性自然リンパ球は、IL-10を介して2型自然リンパ球やT細胞の増殖を抑制することも明らかになった。さらに、気道上皮細胞が、2型自然リンパ球が産生するIL-13の刺激を受けて、より活性の強いレチノイン酸をビタミンAから合成することもわかった。これらの結果から、2型自然リンパ球は、IL-5やIL-13などの2型サイトカインの産生を通して、喘息様の気道炎症の増悪に関与し、その一方でIL-13により上皮細胞で合成されたレチノイン酸を介して、自身を制御性自然リンパ球へと変換し、過剰な炎症を制御するという性質を持つことを明らかになった。
画像はリリースより
レチノイン酸自体は急性前骨髄球性白血病という特殊な白血病の治療薬としてすでに承認されている。その一方でレチノイン酸はさまざまな細胞の分化を誘導し、催奇形性などが報告されている物質であるため、アレルギー疾患に対してそのまま臨床応用することは困難だが、研究グループは「今後はこのメカニズムを活用した新たな治療法の開発が期待される」と述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース