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小児神経難病AADC欠損症に対する遺伝子治療、全例で運動機能が改善-自治医大

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2019年01月29日 PM01:15

国内外6例のAADC欠損症患者の長期経過を報告

自治医科大学は1月25日、芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素()欠損症患者に対し、2015年6月29日から遺伝子治療を行っている国内外の6例の患者(重症型5例、中間型1例)の長期経過をまとめ、その結果を報告した。この研究は、同大小児科学の山形崇倫教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Brain」に掲載されている。


画像はリリースより

AADC欠損症は、生まれつきAADC遺伝子の変異により、ドパミンやセロトニンの合成に必須な酵素AADCが働かなくなる常染色体劣性遺伝性の疾患で、現在、世界中で140例程度、日本では8例が診断されている希少疾病。重症型は乳児期早期に発症し、眼球が上転する発作や全身を硬直させる発作(ジストニア)がみられる。自発的な運動は少なく、首もすわらず、ほとんどの患者が生涯寝たきりの生活を送っている。

そのうち、重症型が80%、運動発達遅滞・知的障害を呈するも独歩可能な軽症型が5%、その間の表現型の中間型が15%となっている。これまで根本治療はなかったが、2012年に台湾から、AADC欠損症に対する遺伝子治療を実施し、運動機能の改善がみられたという結果が報告されている。

AAV-hAADC−2ベクター注入後、認知機能改善、ジストニア発作も消失

研究グループは、定位脳手術で両側線条体(被殻)へAAVベクターにヒトAADC遺伝子を組み込んだAAV-hAADC−2ベクターを注入する遺伝子治療を、自治医科大学附属病院/自治医科大学とちぎ子ども医療センターで実施。AADCの働きを検出するFMT-PET検査で、治療前は被殻に信号がみられなかったが、治療6か月後、さらに2年後のPET検査で、被殻にAADCが働いていることが確認された。また、運動機能をAlberta Infant Motor Scales(AIMS)を用いて評価したグラフでは、重症型(Patient1,2,4,5,6)の全員で数値が上昇し、運動機能が改善していた。Patient2は自力で歩行器歩行が可能、車椅子の自走ができ、家の中は背這いや寝返りで自由に移動できるようになった。

中間型のPatient3は、治療前は手を引いてもらう介助歩行だったが、治療後には自力で走り、自転車やブランコに乗るなど運動機能が改善した。中間型Patinet3は、治療前は数単語の発語のみだったが、会話がスムーズにでき、九九を全て暗唱するなど、言語機能が改善した。新版K式発達検査においても、言語―社会性の発達指数が、40から84に改善(70以上が正常域)。また、週に数回、数時間持続する四肢を強直させるジストニア発作があったが、治療後約2か月で全例においてジストニア発作が消失。また、常に機嫌の悪さが見られていたが、治療後は笑顔が増え、穏やかに過ごすことができ、QOLが大きく改善したという。

AADC欠損症と診断されている患者は他に日本に2名おり、また、海外からの治療希望者も10人以上いる。AADC欠損症の診断は、髄液検査が必要なうえに、診断が困難なため、未診断の患者が存在する可能性もある。そのため、自治医科大ではAADC欠損症の酵素活性および遺伝子検査を可能にし、少量の血液で患者を早期に診断するスクリーニング体制を構築し、パイロットスタディを行っている。研究グループは今後、全国展開を行い早期診断・早期治療が行える体制を整えていくとしている。

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