自己筋芽細胞シートを用いた消化器再生医療
テルモ株式会社は1月22日、長崎大学と消化管の再生医療分野で共同研究講座「消化器再生医療学講座」を開設したことを発表した。講座開設のきっかけとなった「自己筋芽細胞シートを用いた消化器再生医療と腹腔鏡デリバリーデバイスの開発」は、長崎大学第3期重点研究課題(2017~2021年度まで)のひとつで、いずれも長崎大学が特許を出願しており、今後臨床研究への展開も視野に入れているという。
画像はリリースより
十二指腸の早期がんを取り除くための治療(内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD))の際、腸壁に穴が開く穿孔という合併症を起こしやすくなる。十二指腸はほかの臓器と比べて腸壁が薄く、約3割に術後の穿孔が起きるといわれている。穿孔が起きると、消化酵素を含む膵液が腹腔内に広がり腹膜炎などを発症するため、緊急手術や十二指腸を切除する必要があるなど、患者の負担も大きくなる。
ブタへの細胞シートの移植では穿孔生じず
今回、長崎大学移植・消化器外科学の江口晋教授らは、穿孔予防に細胞シートを使用できるのではないかと推察し、研究を開始。現在はブタ(大型動物)を使って研究を開始した。
研究では、ブタの脚から骨格筋を採取し、骨格筋由来の筋芽細胞シートを作製。その後、ブタの十二指腸でESDを施術し、十二指腸の外側から細胞シートを貼付したが、移植後に穿孔は生じなかった。細胞シートは自家細胞由来の絆創膏のような役割を果たすが、その組織の一部に変化するのではなく、組織に働きかける物質を出して再生を促進すると考えられ、このメカニズムと有効性は今後の共同研究で明らかにしていく予定。
食道がんの合併症予防で細胞シートを使った臨床研究に実績のある江口教授ら移植・消化器外科と複数の講座(消化器内科の中尾一彦教授、形成外科の田中克己教授、細胞療法部の長井一浩准教授等)が、細胞シートの再生医療製品を開発・販売するテルモと協力して臨床応用を目指す。テルモはすでに骨格筋由来の筋芽細胞シート作成の技術を有しており、重症心不全の患者の心筋再生手術に使われる「ハートシート」を販売。ハートシートは保険適用されており、大阪大学医学部附属病院や東京大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院など、施設基準の届出がされている全国5病院で実施可能。同技術の消化器分野への応用展開を視野に入れ、新講座を支援する。
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・テルモ株式会社 プレスリリース