アミロイドβの脳内からの排出に働く3つのタンパク質
筑波大学は1月17日、アルツハイマー病(AD)等認知症の発症に関わるアミロイドβタンパク質(Aβ)の脳内からの排出に働く3つのタンパク質が、早期の認知機能低下を評価するバイオマーカーとして有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学医療系の内田和彦准教授、株式会社MCBIの鈴木秀昭研究員らの研究グループによるもの。研究成果は「Alzheimer’s&Dementia: Diagnosis, Assessment&Disease Monitoring」オンライン版に2018年12月18日付で掲載された。
画像はリリースより
2015年の世界の認知症は4680万人で、このまま何もしなければその数は20年ごとに倍になると言われている。認知症の60〜80%を占めるADは、ゆっくりと認知障害が進むのが特徴で、その発症には、脳内に蓄積されたAβが関わっていることがわかっている。Aβは正常な脳内でも産生されており、脳から血液へと排出されている(Aβクリアランス)。ADではAβクリアランスの低下が発症の原因と考えられている。
認知症の予防につながる血液検査として期待
今回の研究では、Aβクリアランスに関与する、アポリポタンパク質(ApoA−I)、トランスサイレチン(TTR)、補体タンパク質(C3)という3つのタンパク質につき、血液バイオマーカーとしての臨床有用性を検討した。273名の被験者を対象に、血清中のこの3つのタンパク質とコレステロール量を測定し、その中で軽度認知障害(MCI)およびADと診断された63名の被験者につき、MRIおよびSPECT検査を行って脳画像を比較した。
その結果、この3つのタンパク質の血中量が、MCIにおける認知機能低下および脳イメージングの変化と一致しており、これらのタンパク質が、認知機能低下を評価する上で、有効なバイオマーカーとなることが明らかとなった。
認知症の前駆段階である軽度認知障害(MCI)は、認知症の発症を予防する潜在的介入のための重要な機会と考えられる。このため、血液バイオマーカーによって認知機能低下の評価を行うことは、ADなどの認知症の予防において重要となる。研究に用いた3つのタンパク質を対象とするMCIスクリーニング検査は、MCBIがすでに実用化している。今回の研究で早期MCIの認知機能低下とそれに伴う脳血流低下や脳萎縮と関連することが明らかになったことで、認知症の予防につながる血液検査として期待される。今後、研究グループは、より多くの症例を用いた臨床研究を行うとともに、運動などの予防介入による効果と血液バイオマーカーの関連性について研究を進める予定。
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