膵がん患者に高発現するCKAP4の抗体を作製
大阪大学は1月15日、膵がんにおいて高発現する細胞膜タンパク質CKAP4に対する抗腫瘍活性のある抗CKAP4モノクローナル抗体の作製に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の菊池章教授(分子病態生化学)らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Clinical Cancer Research」オンライン版に1月4日付で掲載された。
画像はリリースより
同研究グループはこれまでに、同研究科の消化器外科学、呼吸器外科学、病態病理学との共同研究で、1)CKAP4が細胞外分泌タンパク質DKK1の受容体として機能すること、2)膵がんの約60%の患者において、DKK1とCKAP4が共に発現しており、両タンパク質を発現している患者の生存期間が短いこと、3)抗CKAP4ポリクローナル抗体がDKK1とCKAP4を共に発現している膵がん細胞の増殖を阻害することを報告してきた。しかし、抗体医薬品の開発に必須の「抗腫瘍活性をもった抗CKAP4モノクローナル抗体」は未作製だった。CKAP4タンパク質は、ヒトとマウスでアミノ酸配列上の同一性が高く、正常なマウスにCKAP4を免疫する方法では、種々の抗原決定基を認識する多様なモノクローナル抗体を得ることが困難だったためである。
新たなコンパニオン診断薬および治療薬の開発に期待
今回研究グループは、遺伝子操作によりCKAP4を体内で作れなくさせたCKAP4ノックアウト(KO)マウスを作出し、このマウスにCKAP4を免疫することにより、抗腫瘍活性を有した複数の抗CKAP4モノクローナル抗体を作製することに成功した。また、細胞膜タンパク質で本来は細胞外に存在しないCKAP4が、細胞から分泌されるエクソソーム上に発現することも見出した。
そこで、コンパニオン診断薬として活用するために、抗CKAP4モノクローナル抗体を用いて、膵がん細胞から分泌されたCKAP4を検出するための方法を開発し、ヒト血清中でCKAP4を測定することに成功した。この方法を用いて、実際に検査したところ、膵がん患者の血清CKAP4値は健常人血清CKAP4値よりも高く、膵がん切除術後に血清CKAP4値が著しく減少することが判明した。さらに、この抗体の治療効果を調べたところ、膵がんモデルマウスにおいて、現在の膵がん標準治療薬であるゲムシタビンと抗CKAP4モノクローナル抗体を併用することにより、抗腫瘍効果の増強が確認された。今回の発見は、膵がんの新たな診断薬や、効果の高い治療薬の開発に貢献することが期待されると研究グループは述べている。
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