厚生労働省は10日、MSDの肺炎球菌ワクチン「ニューモバックス」で有効期間を超えた試薬を使用した製品が出荷されていた件をめぐり、同社に立入検査を行った結果を厚生科学審議会予防接種基本方針部会に報告した。立入検査の結果、製造担当者が承認書の変更手続きの必要性を認識していなかったことなどが判明。これを踏まえ、厚労省はMSDに対して、昨年12月27日に文書で行政指導し、原因究明と改善を求めた。
ニューモバックスをめぐっては、ワクチンの有効成分濃度を測定する際、比較対象として使用する試薬について、2年間の有効期間を超えたものを使用して規格試験を行った製品が出荷されていたことが発覚。米国向けと日本向けの製品を同じ工場で製造し、米国では2017年8月に有効期間を3年に変更する延長手続きを完了していた一方、日本では手続きを行っていなかったことが原因とみられ、厚労省は「流通済み製品の有効性・安全性に問題はない」と判断。ただ、原因究明や類似事例の有無を確認するため、昨年12月13日にMSDの国内法人、17日に同社工場に立入検査を行った。その結果、米国から輸入された製品の試薬の有効期間が延長されていたことを昨年2月に工場が気づいていたものの、製造担当者が承認書の変更手続きが必要なことを理解していなかったことが判明した。
また、同社が有効期間延長に関する一部変更承認申請を行う必要があることを昨年9月に認識していたものの、出荷を止める必要性は認識していなかったことが分かった。
さらに、ニューモバックスのほか、ヘプタバックス、ロタテック、ガーダシルなど他のワクチンの製造方法や承認内容と実際の製造方法に違いがないかどうかも確認したが、問題は見られなかった。
検査結果を踏まえ、厚労省は昨年12月27日、MSDに対して再発防止に向けた社員教育や米国、日本間の情報共有の徹底などを文書で行政指導し、原因究明と改善を求めた。
MSDは、弁護士などを交えた第三者組織を立ち上げた上で、原因究明と再発防止策の検討を行う予定にしている。