心血管イベントの発現リスクが高くスタチン治療が適さない、家族性高コレステロール血症及び高コレステロール血症の適応追加
サノフィ株式会社は2018年11月21日、高コレステロール血症治療剤「プラルエント(R)皮下注75mgペン、同皮下注150mgペン」(一般名:アリロクマブ(遺伝子組換え))について、「心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない、家族性高コレステロール血症及び高コレステロール血症」の適応追加承認を発表。このことを受け、2018年12月にメディアセミナーを開催し、りんくう総合医療センター病院長で日本動脈硬化学会理事長の山下静也氏らが講演した。
りんくう総合医療センター病院長
日本動脈硬化学会理事長 山下静也氏
HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は、忍容性が良好な薬剤で、高コレステロール血症の治療に広く用いられている。山下氏は「スタチンは動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)予防に有用」と解説。しかし、筋障害、肝酵素の上昇、新規の糖尿病発症など服用に伴う有害事象の発生や、検査値異常などによって、スタチン服用継続困難な場合もある。山下氏は「スタチンの服用中断は稀ではない」とし、「スタチン服用中断者では、心血管病予防効果が失われる」とコメントした。また、「家族性高コレステロール血症(FH)患者では、生涯の累積LDLコレステロール値が一定の値を超えると冠動脈疾患を発症すると考えられ、治療開始が遅延した患者や他の危険因子を有する患者では、より強力な脂質低下が求められる」(山下氏)
プラルエントは、PCSK9を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体。肝細胞表面にあるLDL受容体へのPCSK9結合を阻害することで、LDLコレステロールの除去に利用できるLDL受容体数を増やし、その結果、LDLコレステロール値を低下させる。
「PCSK9阻害薬のLDL-C低下効果は顕著、心血管疾患イベント抑制効果も」山下氏
プラルエントの第3相ODYSSEY NIPPON試験は、スタチン療法が相応しくない、または低用量スタチンから増量できない理由を有する高コレステロール血症患者で、スタチン以外の脂質低下療法(食事療法単独を含む)または低用量スタチン療法でLDLコレステロールの管理目標を達成しない日本人患者を対象とした試験。同試験では、プラルエント150mgを4週に1回(Q4W)および2週に1回(Q2W)投与についてプラセボを対照として評価した。
同試験の結果、プラルエント投与後12週時点のベースラインからのLDLコレステロール変化率は、Q4W群-42.2%、Q2W群-70.0%であり、いずれの投与レジメンでもプラセボ群-4.3%と比較して有意なLDLコレステロールの低下を示したという(p<0.0001)。同試験の結果より、スタチン以外の脂質低下療法(食事療法単独を含む)でLDLコレステロールを管理できない高コレステロール血症患者では、プラルエント150mg Q4Wが適切な用法・用量であり、効果不十分な場合には150mg Q2Wに増量することの適切性が示された。プラルエントの安全性データは、過去の臨床試験で認められた安全性プロファイルと一貫していたとしている。
また、急性冠症候群(ACS)発症後1~12か月(中央値:2.6か月)の患者でスタチン強化療法または最大耐用量のスタチン療法を受けている患者18,924名を対象としたODYSSEY OUTCOMES試験では、プラルエントが主要心血管イベント(MACE)のリスクを15%減少させた。MACEの発現例数は、プラルエント群で903例(9.5%)、プラセボ群で1,052例(11.1%)だった(HR:0.85、95% CI:0.78-0.93、p<0.001)。
山下氏は、「PCSK9阻害薬のLDLコレステロール低下効果は顕著で、心血管疾患イベント抑制効果が証明された」と評価し、「スタチン不耐例では、他の薬剤としてPCSK9阻害薬も考慮する」とした。
▼関連リンク
・サノフィ株式会社 プレスリリース