仏Servier社が創製したHCNチャネル阻害薬
小野薬品工業株式会社は12月27日、HCNチャネル阻害薬「イバブラジン塩酸塩」について、「洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全」の効能・効果で、国内製造販売承認申請を行ったと発表した。
イバブラジンは、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、過分極活性化陽イオン電流(If)を抑制する、仏Servier社により創製された新規作用機序の経口剤。心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響することなく、心拍数のみを減少させる作用を有している。小野薬品工業は、2011年9月にServier社と締結したライセンス契約に基づき、同剤について日本で独占的に開発・商業化する権利を取得している。
これまでに同剤は、慢性心不全の適応で2012年2月に欧州委員会(EC)が承認。米国では、2015年4月に米国食品医薬品局(FDA)より、Servier社の提携会社である米Amgen社が同適応症で承認を取得している。また、2005年10月には、ECによって慢性安定狭心症の適応でも承認されている。同適応症については、世界122の国または地域で承認されており、うち115か国において、慢性安定狭心症および慢性心不全の両適応で承認されている。
国内外2つの臨床試験結果に基づく申請
今回の申請は、主に「J-SHIFT試験」と「SHIFT試験」という2つの臨床試験結果に基づくもの。J-SHIFT試験は、国内で実施した多施設共同無作為化二重盲検比較試験で、最善の既存治療下、NYHA心機能分類がII~IV度、洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上、左室駆出率(LVEF)が35%以下の日本人慢性心不全患者254例を対象としている。「SHIFT試験」は、J-SHIFTと同様の慢性心不全患者(洞調律下での安静時心拍数については70回/分以上)6,505例を対象に、海外で実施した多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較試験だ。
慢性心不全に対しては、患者の症状コントロールや入院予防、死亡の回避を目的に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬、利尿薬などの治療薬が使用されている。イバブラジンは、既存の慢性心不全治療薬を服用しても心拍数が高い患者に対して、新たな治療選択肢のひとつとなることが期待されている。
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・小野薬品工業株式会社 ニュースリリース