商用化を見据え、CPCでの技術開発や技術検証が課題に
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、住友化学株式会社および大日本住友製薬株式会社は12月21日、より高品質な臨床用iPS細胞を製造するための共同研究を開始したと発表した。
CiRAでは、2013年度から再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを推進し、CiRA附属の臨床用細胞調製施設(CPC)であるFacility for iPS Cell Therapy(FiT)において、原料の細胞となるiPS細胞ストックを製造してきた。また、iPS細胞を用いた日本初のパーキンソン病の治験においては、大日本住友製薬がiPS細胞ストックを拡大培養してマスターセルバンクを作製し、さらにFiTで最終製品となるドパミン神経前駆細胞を製造するなど、着実に臨床用細胞製品の製造実績を積んできた。
一方、iPS細胞を使用した細胞治療の一般医療への普及に向けては、高品質で均一なiPS細胞を大量かつ安定的に製造することが必要だ。しかし、実験室で開発された技術を、厳格に管理されたCPCで再現することは容易ではないことから、商用化を見据えたCPCでの技術開発や技術検証が重要な課題となっている。
既存の製造プロセスの見直しや新規技術を検討
その課題解決に向け、住友化学および大日本住友製薬は、日本初のiPS細胞ストックやiPS細胞を用いた治験における細胞製造に成功したFiTの高いCPC管理能力に注目。今回の共同研究が実現することになったという。
この共同研究では、FiTを有するCiRAのiPS細胞製造・品質管理技術、大日本住友製薬の再生・細胞医薬品の商用生産・品質管理技術、住友化学の幹細胞関連技術をFiTに持ち寄り、臨床用iPS細胞の品質向上に向けて既存の製造プロセスの見直しや新規技術の検討を行う。これらの取り組みにより、より効率的で安定的な商用製造に適用可能な臨床用iPS細胞の製造技術を確立し、高品質な臨床用iPS細胞の産業利用につなげていくとしている。
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