単剤またはトレメリムマブ併用療法を標準療法と比較
英アストラゼネカ社および同社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンは12月13日、スイス・ジュネーブで開催された2018年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)がん免疫療法会議において、第3相MYSTIC試験の全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)に関するデータを発表した。
MYSTIC試験は、前治療歴のないステージIV(転移性)非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象として「イミフィンジ(R)」(遺伝子組み換え、一般名:デュルバルマブ)単剤療法またはイミフィンジと抗CTLA-4抗体であるトレメリムマブの併用療法と、白金製剤を用いた標準化学療法とを比較検討した試験だ。
イミフィンジは、ヒトPD-L1に対するヒトモノクローナル抗体であり、PD-L1に結合しPD-L1とその受容体であるPD-1およびCD80の相互作用を阻害することで、腫瘍の免疫逃避機構を抑制し抗腫瘍免疫反応を誘発する。同剤は、切除不能なステージIII NSCLCの治療薬として米国、EUおよび日本を含む40か国以上において第3相PACIFIC試験に基づき承認されている。また、前治療歴のある進行膀胱がん患者の治療薬としても、米国、カナダ、ブラジル、イスラエル、インド、アラブ首長国連邦、オーストラリアおよび香港において承認されている。
bTMB高値患者への併用療法、死亡リスクを38%低減
同試験により、イミフィンジ単剤療法は、OS(ハザード比(HR)0.76(97.54%信頼区間 0.564-1.019; 名目p値=0.036))において、主要解析患者集団であるがん細胞の25%以上にPD-L1が発現していた腫瘍を有する患者に臨床活性があることが実証されたが、統計学的有意差には到達しなかった。2年時点での生存割合は、標準化学療法群の22.7%に対し、イミフィンジ単剤療法群では38.3%。標準化学療法群の患者のうち39.5%は、化学療法後に免疫療法を受けていたにもかかわらずこの差異が認められた。イミフィンジとトレメリムマブの併用療法は、PFSおよびOSのどちらの主要評価項目も達成しなかったという。
また、あらかじめ規定された血液中の腫瘍遺伝子変異量(bTMB)の探索的解析により、メガベースあたり16以上の変異と定義されたbTMB高値はイミフィンジ単剤療法およびイミフィンジとトレメリムマブとの併用療法においてOSの延長と関連していることが示された。bTMB高値の患者において、併用療法は標準化学療法群に比べて38%死亡リスクを低減し(HR 0.62, 95%信頼区間 0.451-0.855)、単剤療法群のOS HRは標準化学療法群との比較で0.80だった(95%信頼区間 0.588-1.077)。これらの予備データは、全患者の72.4%に相当する809検体をもとにしている。
なお、この解析は、NSCLC患者を対象に米国食品医薬品局により画期的医療機器指定が最近付与されたGuardant Health社の極めて侵襲性の低い診断検査を用いて判定される血漿ベースのTMBスコアを使用。追加のbTMB解析は、今後の国際学会において発表すべく準備を進めたいとしている。
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