GBSの先行感染菌のひとつ、カンピロバクターjejuni
岐阜大学は12月17日、ギランバレー症候群の発症メカニズムや治療法の解明に繋がると考えられる「カンピロバクターjejuni(ジェジュニ)」の糖鎖を世界で初めて化学合成することに成功したと発表した。この研究は、同大生命の鎖統合研究センター長・応用生物科学部の石田秀治教授、応用生物科学部の今村彰宏准教授、生命の鎖統合研究センターの田中秀則助教らの研究グループによるもの。研究成果は、欧州化学論文誌「Chemistry A European Journal」にて公開された。
画像はリリースより
ギランバレー症候群は、10万人に1~2人の割合で発症する自己免疫疾患。患者は運動神経が障害され、重症の場合は全身の麻痺や呼吸不全を来たし、治療後も2割程度の患者には深刻な後遺症が残る。その先行感染菌のひとつとして「カンピロバクターjejuni」の存在が知られていた。
カンピロバクターjejuniの表面に存在する糖鎖は、筋肉に神経信号を伝達する軸索の表面に存在する糖鎖「ガングリオシド(ガングリオシドGM1)」と一部の構造が似ている。そのため、抗原であるカンピロバクターjejuniに感染したときに体が生み出す抗体が、軸索表面のガングリオシドを抗原と誤って攻撃することで、筋力が低下し、自己免疫疾患であるギランバレー症候群を発症すると考えられている(糖鎖相同性仮説)。しかし、カンピロバクターjejuniの糖鎖は、微量にしか存在せず、また多様性があり、混入物を避けてこの糖鎖だけ取り出して実験をすることが困難だ。
複雑な構造を有するカンピロバクターjejuniの糖鎖
今回、研究グループが合成したカンピロバクターjejuniの糖鎖は複雑な構造であり、100以上に及ぶ化学合成の工程を要するという。この糖鎖を実験に用いることで、カンピロバクターjejuniを原因とするギランバレー症候群の発症メカニズムの解明や治療法の解明につながると考えられるという。
岐阜大学はおよそ50年にわたる糖鎖合成の経験があり、これまでに1,000種類以上の糖鎖誘導体の合成に成功するなど、糖鎖合成の豊富な知見と技術を培ってきた。研究グループは、「今後も多彩な糖鎖を化学合成し、さまざまな疾患の原因や治療法および未知の生体メカニズムの解明につなげることが期待される」と述べている。
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・岐阜大学 プレスリリース