パーキンソン病の症状に深く関与する脳深部の視床下核
大阪大学は12月18日、脳深部の脳波を患者自らが制御して変える新しい技術を開発し、パーキンソン病と脳深部活動との関係を明らかにしたと発表した。この研究は、同大の栁澤琢史教授(高等共創研究院)および貴島晴彦教授(大学院医学系研究科脳神経外科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「eNeuro」に公開されている。
画像はリリースより
脳深部の視床下核は、パーキンソン病の症状に深く関与していることが知られている。実際、同部位に外科的に電極を留置して電気刺激を行うと、パーキンソン病の症状が緩和する。そのメカニズムとして、視床下核における異常な脳活動(β振動)が関与していると考えられてきたが、β振動だけを制御する方法がなく、詳細は不明だった。
10分間の訓練で視床下核のβ振動が有意に変化
今回研究グループは、視床下核の電気刺激を治療として受けているパーキンソン病患者の脳波を、電気刺激装置の電池交換を受ける際に電極から計測。さらに、計測した視床下核の脳波からβ振動の強さをリアルタイムに計算し、その大きさを円の大きさとして患者に提示することで、患者は自らの意思で視床下核のβ振動の大きさをコントロールできるようになった。実際に、患者が10分間、円の大きさを変える訓練を行なったところ、視床下核のβ振動が有意に変化することが示された。この成果は、脳深部の脳波を意図的に制御できることを示した初めてものだという。
一方、β振動とパーキンソン病の症状との関係を調べたところ、有意な関係が見られなかった。これまで、β振動がパーキンソン病の症状の原因と考えられていたが、より症状と関連するほかの脳活動があることが示唆されたとしている。
近年、脳深部刺激装置が脳波を自動解析し、刺激を制御する技術が開発されている。今回の研究成果は、このような技術と組み合わせることで、症状の原因となる異常な脳活動にターゲットを絞り、効率的に症状を緩和する新しい治療法の開発につながる、と研究グループは述べている。
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