動脈の炎症を主体とする原因不明の全身性血管炎
京都大学は12月17日、高安病に関連する新規遺伝子を発見し、その病態メカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学分野の寺尾知可史非常勤講師(理化学研究所生命医科学 研究センター 副チームリーダー)と、吉藤元助教らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
高安病(高安動脈炎/大動脈炎症候群)は、主に若年の女性に発症し、大動脈およびその主要分枝における動脈の炎症を主体とする全身性血管炎。高安病の原因としては遺伝的要因や感染症などの環境的要因が推定されているが、原因は明らかではなかった。
研究グループは、2013年に世界で初めて高安病を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)を行い、IL12B遺伝子を含む2遺伝子が高安病と関わることを示していた。このIL12Bは、同時期にトルコ・アメリカのグループからも高安病との関連が報告され、人種共通の感受性遺伝子であることも示されていた。
LILRA3とHLA-B52の相互作用で免疫系の制御異常
今回研究グループは、各施設の患者に加えて、高安病の患者団体「あけぼの会」から協力を得て患者のDNAを収集。国内患者(約6,000人)の10%以上の検体を集めて高安病の全ゲノム関連解析を行い、新規関連遺伝子を6つ発見した(PTK2B、LILRA3/LILRB2、DUSP22、KLHL33、HSPA6/FCGR3A、chr21q.22領域)。
次に、この6つの遺伝子と先行研究で高安病に関連していることが判明している遺伝子について、遺伝学的に解析したところ、これらの遺伝子がnatural killer細胞(NK細胞)の遺伝子発現調節領域に最も強く集積することが判明。これにより、NK細胞が高安病の病態に重要であることが推定された。さらに、今回発見した遺伝子のひとつLILRA3と、先行研究で高安病との関連が判明したHLA-B52遺伝子とが相互作用して免疫系の制御の異常を引き起こし、高安病の病態に関与することも解明した。
高安病は患者数が少なく、疾患原因が数多くあると推定される希少複合性疾患だが、今回の研究では国内患者数の10%以上の検体を遺伝学的に解析することで、新規関連遺伝子と病態に重要な細胞の候補を同定した。研究グループは「今後、NK細胞と高安病の関連の詳細な研究を進めるほか、さらなる関連遺伝子の発見を目指して研究を進める予定」としている。
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・京都大学 研究成果