大阪市が保有する多数・多様な介護保険ビッグデータを解析
大阪市立大学は12月14日、大阪市福祉局から依頼を受け、市から提供された介護保険データビッグデータを分析し、その結果を取りまとめて発表した。この研究は、同大が2017年2月に大阪市と締結した「健康寿命の延伸に関する包括連携協定」に基づく事業の第一号として実施。同大看護学研究科の河野あゆみ教授(在宅看護学)ら「福祉局ビッグデータ解析プロジェクトチーム」により行われた。研究結果は、大阪市福祉局より公開されている。
大阪市の高齢者は、高齢者世帯のうち単身世帯が42.4%(全国平均27.3%)と半数近く占めており、認知機能が低下した高齢者の増加率が高齢者人口の増加率より高いという特徴がある。周囲の人々と交流が少ない独居高齢者は、認知機能の低下が早期に発見されず、重度化した状態から介護給付等の対象になる可能性がある。また、独居高齢者に認知機能や生活機能の低下がみられる場合、在宅生活の継続が困難になるため、速やかな認知症対策・介護予防を講じる必要がある。
プロジェクトは、大阪市が保有するビッグデータを有効に活用し、データ分析に裏付けられた効果的な施策を実施することで、大阪市による市民サービスの向上と効果的な行政運営を行うことを最終的な目的としている。今回の研究では、2007年度から2016年度までの大阪市要介護認定情報に関するデータを活用。対象期間に新規要介護認定を受けた高齢者は19万6,140人だった。独居/非独居、年齢・性別、介護保険料段階、介護サービス利用の状況、認知機能、生活機能、施設入所の有無など多岐にわたるデータ項目で解析することにより、各々の認定時における特徴を明らかにすることを目指し、特に高齢者の独居が認知機能・生活機能の低下や死亡のリスクにどの程度影響するかどうか分析したという。
独居/非独居高齢者の生存率、男女とも違いは認められず
分析の結果、大阪市の高齢者が新規に要介護認定を受けた時点では、男性の独居高齢者は女性の独居高齢者に比べて、年齢が若いという特徴がみられた(男性75.7歳、女性79.8歳)。また、独居高齢者であることは、認知機能や生活機能の維持と関連し、認知機能・生活機能を維持しているために独居を継続している可能性や、独居者は機能低下の前に生活上のニーズから要介護認定を受けている可能性が考えられるとしている。なお、独居高齢者と非独居高齢者の生存率には、男女とも違いはみられなかったという。
今回の分析では、独居を大阪市の賦課情報により世帯人員を定義したが、独居高齢者の生活背景は多様であり、より具体的な対策を講じるためには家族構成や他者との交流状況を踏まえた解析が必要と考えられる。また、今後は経済学の視点からも追加の解析を行う予定であり、研究グループは「日本の介護保険制度の特性・変遷に注目して、介護保険制度が提供するサービスが人々の健康状態に与える影響の推定およびその経済的影響を分析するために、介護サービスに対する人々の需要行動を分析し、需要の価格弾力性等の推定を行うことなどを考えている」と述べている。
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