満期産児と早産児を対象に言語発達の縦断調査を実施
京都大学は12月10日、早産児に対する、早期からの発達支援に生かせる言語発達を予測する有効な指標を発見したと発表した。この研究は、同大大学院教育学研究科の明和政子教授、同医学部附属病院の河井昌彦准教授、武蔵野大学教育学部こども発達学科の今福理博講師、京都大学医学部附属病院の丹羽房子助教、東京大学大学院教育学研究科の新屋裕太特任研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Early Human Development」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
早産児は、脳に重篤な疾患のない場合でも、言語・認知発達に問題を抱えるケースが多く、特に乳児期後半から児童期にかけての語彙獲得が遅いことが知られている。その発達支援においては、早産児が抱えるリスクをできるだけ早期に検出・評価することが重要だ。これに関して、満期産児は、乳児期に口の形状と音声が一致した発話(一致発話)を好む傾向が高いほど、言語発達が良好であるという報告がある。
研究グループは「早産児では満期産児に比べて、発達早期に一致発話を選好する傾向が低い児が多い」、「その傾向には個人差があり、発達早期に一致発話を選好する乳児ほど言語発達が良好である」という2つの仮説のもと、満期産児と早産児を対象とした縦断調査を行った。調査の対象となったのは、出生予定日からの月齢が6、12、18か月(修正齢)の早産児20名(在胎23~35週で出生)と、満期産児20名。口の形状と音声が一致または不一致となる発話映像をモニターの左右に並べて提示し、対象児の視線反応を、視線自動計測装置(アイトラッカー)を用いて計測した。その後、それぞれの児が1歳、1歳半の時点(早産児の場合は修正齢)で語彙獲得の評価を行い、一致発話を選好した割合との関連を検討した。
一致発話を選好した児ほど、理解できる語彙数多く
その結果、全般的に早産児グループでは一致発話への選好がみられなかった(修正齢6、12、18か月)がそれは個人差が大きいこと、1歳、1歳半時点(早産児は修正齢)で「理解できる語彙数」と「表出できる語彙数」が、早産児では満期産児よりも少ない傾向にあったこと、6か月の時点で一致発話を選好した児ほど、1歳・1歳半の時点で理解できる語彙数が多かったことが明らかになったという。これらの結果から、早産児が抱える言語発達リスク要因のひとつとして、生後早期からの視聴覚統合処理機能が関連していることが判明。周産期の環境経験の違いが、発話に含まれる視聴覚情報の統合処理の発達に影響する可能性もみえてきたとしている。
研究グループは「今後、発達早期の視聴覚統合処理発達に影響を与える要因、たとえば、周産期の環境経験(早産児が育つNICU内で生じている日常的なノイズ音経験や、他者と触れ合う経験の少なさなど)との関連を明らかにする必要がある。また、発達早期の視聴覚統合処理特性が、学齢期以降の言語・認知発達、発達障害の発症リスクとどのように関連するかについても、慎重かつ継続的に検証を重ねることも重要だ」と、述べている。
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・京都大学 研究成果