活性型ビタミンDの効果、ランダム化比較試験で検証
大阪市立大学は12月12日、血液透析治療を受けている慢性腎臓病患者に活性型ビタミンDを投与しても、心血管疾患のリスクは低下しないことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科血管病態制御学の庄司哲雄研究教授、代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らの研究グループによるもの。研究成果は「JAMA」に掲載されている。
画像はリリースより
透析患者では心血管疾患を引き起こすリスクが著しく高く、その予防方法が求められている。これまでの研究で、血圧やコレステロール管理を行っても心血管リスクは低下できないことが示されており、骨ミネラル代謝異常の是正が有効であると期待されていた。
そのような中、活性型ビタミンD使用中の患者は使用していない患者と比較して、死亡率、心血管死亡率、心血管疾患発症率が低いという観察コホート研究が多数報告され、ビタミンDは「長寿ホルモン」ではないかと考えられるようになり、ランダム化比較試験による確認が求められていた。今回の研究は、その確認を目的に計画し、10年がかりで実施したという。
心血管リスク、活性化ビタミンD投与群で25%高く
研究グループは、全国108施設の976名の透析患者(20~80代の男女)を、活性化ビタミンDを投与するグループと非投与の2群にランダムで割り当て、その後4年間追跡。その結果、予想とは反し、活性型ビタミンDを投与した透析患者の心血管リスクは低下せず、むしろ上昇傾向にあることが明らかになった。
統計学的な有意差はないものの、投与群は非投与群よりも25%心血管リスクが高まる傾向が示され、死亡率についても両群で有意差は認められなかった。4年間の追跡率は97.9%と非常に高く、信頼性の高いデータといえるとしている。
これまでに、活性型ビタミンDによる治療が透析患者にみられる骨・ミネラル代謝の是正に効果があり、骨病変予防に対する有益性は確立されている。今回の研究の結果が有益な薬剤の適正使用に役立つことを期待している、と研究グループは述べており、今後は、透析患者の中でも活性型ビタミンDの投与により心血管リスクの低下する群と低下しない群を事前に見分けることができるような方法がないか、検討を進めるとしている。
▼関連リンク
・大阪市立大学 プレスリリース