■薬局業務の改善、適正化目指す
薬局コンプライアンス研究会が8日に発足し、都内で初会合を開いた。偽造医薬品の流通や薬歴未記載、処方箋付け替え不正請求など、薬局による不祥事が相次いだことを背景に、薬局がコンプラインスや制度を踏まえた経営・運営を行っていくための知識やノウハウを共有することが主な目的。薬剤師資格を持つ弁護士の赤羽根秀宣氏(中外合同法律事務所)が代表を務める。赤羽根氏は、チェーン薬局などで不祥事が相次いだ背景について、「医薬分業が急速に進展したこともあり、これまで、あまりコンプライアンス、ガバナンス、内部統制システムに手が回らなかった」と分析。同研究会について、「薬局ならではのガバナンスや内部統制を考え、共有する場にしたい」との意気込みを語った。
研究会では、▽薬局ならではの問題の洗い出し▽薬局にかかるガバナンス・内部統制システムの検討▽薬局での業務手順の検討▽他社の取り組みの共有▽法的な疑問点の解消▽法改正への対応の検討――などに取り組む。
また、トレーシングレポート(服薬情報提供書)の医師への提供など、個人情報保護の観点から「グレーとされる業務」などについて、「適法と解釈できるようにするための運用の検討」も行う。
コンプライアンスについて、「単に法律を守っているだけでは足りない」と指摘。コンプライアンスを達成する上で、薬機法、薬剤師法、健康保険法、社内ルール、社会的な常識、倫理などに留意しつつ、「適正かつ健全に事業を継続していくことが重要になる」と強調した。
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で指摘されている、「薬局の組織ガバナンスの確保」について、「チェーン薬局だけが対象なるという話にはなっていない」と指摘。薬局の許可が店舗ごとに行われることを踏まえると、「薬局の開設者であればガバナンス確保の体制が必要だという認識だ」と語った。
さらに、薬剤師・薬局が「世間からどう見られていて、どういう要請があるか」といった視点も「重要になる」とし、こうした社会的要請に応えられていない場合、「コンプライアンス上の問題が指摘される」と説明。そうしたことも含め、「国民、患者から後ろ指をさされないような経営をしていくことが大事」との認識を示した。
一方、制度部会で提案されている、薬剤師による投薬期間中の継続的な患者フォローを法制上、義務化することについて、「インパクトのある法改正」とした上で、「きちんとできるシステムを構築しておかないと、万が一、薬剤師が副作用に気づかずに患者が入院してしまった場合に、義務違反で訴えられるようなことになりかねない」と注意を促した。
■調剤後の「サポートコール」‐医師、患者の満足度向上
「これからの薬局」で講演した孫尚孝氏(ファーマシィ医療連携部)は、制度部会での服用期間中の患者フォロー義務化に関連し、調剤を行った数日後に体調変化や副作用について電話でフォローアップする同薬局の「サポートコール」の取り組みを紹介。
今年3月から4月にかけての1カ月間で、「処方変更があった79件」に対してサポートコールを行った結果、「副作用あり」が18%で、「症状の改善なし」が15%、「服用中止・自己調整していた」が13%で、「およそ半分に問題事例があった」ことから、「ショックを受けた」とした。
ただ、サポートコールに対する満足度調査では、9割以上の医師が「有益」と答え、全ての患者が「良かった」と回答。患者の9割が今後もサポートコールを希望したという。孫氏は、「適切な薬物療法は適正処方と適正使用の両輪。どちらが欠けても成り立たない」と語った。