長期培養が困難だったヒト腸管上皮オルガノイド
慶應義塾大学は12月7日、ヒト腸管上皮オルガノイドを永続的に培養する新規培養技術を開発したと発表した。この研究は、同大医学部坂口光洋記念講座(オルガノイド医学)の佐藤俊朗教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米科学誌「Cell Stem Cell」オンライン版にて公開された。
画像はリリースより
ヒトの腸管上皮には、水分や栄養分の吸収、粘液の分泌やホルモンの産生を担うさまざまな分化細胞が存在する。研究グループは2009年にマウスの腸管上皮の幹細胞を体外で永続的に三次元培養するオルガノイド技術を開発。さらに2012年には、ヒトの腸管上皮のオルガノイド培養に成功し、ヒトの正常腸組織や腫瘍細胞を培養皿の上で培養することが可能になった。しかし、従来の培養条件では、ヒトの腸管上皮幹細胞は分化細胞を生み出すことができず、多様な分化細胞からなるヒト腸管上皮オルガノイドを長期に培養することは困難だった。
培養に用いる増殖因子を「IGF-1」と「FGF-2」に置き換え
今回の研究では、培養に用いる増殖因子を見直し、ヒト腸管組織で機能する「IGF-1」と「FGF-2」という2つの因子で置き換えることで、より生体内に近い環境を培養液に再現。この新規手法を用いることにより、分化細胞が供給され続ける生体に類似したオルガノイドを効率的に作成することができるようになったという。
この改良培養法は、従来使用していた増殖因子を新しい増殖因子に置き換えるだけで成立する。そのため、ヒト腸管上皮オルガノイドの効率的な長期培養と分化細胞の維持を両立する簡便な新規培養技術として、今後さまざまな分野での応用が可能だという。また、本来の組織に近いヒト腸管上皮オルガノイドを効率的かつ半永久的に培養することが可能になることから、「従来マウスで行っていた薬剤試験や遺伝子機能解析、および新規治療薬の臨床試験などを、培養皿の上で高精度かつ簡便に行うことができるようになることが期待される」と研究グループは述べている。
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・慶應義塾大学 プレスリリース