■「レミケード」が大半占める
関節リウマチや炎症性腸疾患に使用される生物学的製剤の1バイアルに残った薬剤を分割使用した結果、1年間で約3100万円の薬剤費を削減できることが、地域医療機能推進機構(JCHO)四日市羽津医療センター薬剤科の調査で明らかになった。これまで抗癌剤の分割使用による医療費削減効果は報告されていたが、同様に高価な生物学的製剤についても分割使用による削減効果が裏づけられた格好だ。
■四日市羽津医療センター薬剤科
注射用抗癌剤の残液の廃棄額が年間約738億円に上るとの報告がある中、バイアル内に残った残液を有効活用する分割使用に注目が集まっている。今年4月には、厚生労働省から「注射用抗癌剤等の適正使用と残液の取り扱いに関する手引き」が公表され、2回までの分割使用が正式に可能となった。
ただ、注射用抗癌剤の残液の分割使用により、医療費削減につながることを示した報告は見られるものの、抗癌剤と同様に高額薬剤として知られる生物学的製剤についての検討は少ないのが現状。また、同センターでは、クローン病、潰瘍性大腸炎の炎症性腸疾患、関節リウマチ患者が多く、生物学的製剤が多く使われている。
こうした中、同センター薬剤科は、生物学的製剤を含めた残液の医療経済効果を明らかにするため、生物学的製剤の分割使用による薬剤費削減効果について検討を行った。
昨年4月から今年3月までの1年間にわたってオーダーされた生物学的製剤5種類の必要バイアル本数と、分割使用によって実際に使用したバイアル本数の差を算出。削減できたバイアルの本数から削減額を薬価で計算した。
生物学的製剤の使用実績を見たところ、1年間で1227人に使用され、その内訳はクローン病が727人と最も多く、次いで関節リウマチが291人、潰瘍性大腸炎が188人、ベーチェット病が15人、強直性脊椎炎が6人となった。使用された生物学的製剤は、「レミケード」が965人と約8割を占め、次いで「アクテムラ」が121人、「オレンシア」が104人、バイオ後続品の「インフリキシマブBS『NK』」が29人、「ステラーラ」が8人となった。バイオ後続品を含めると、使用されている生物学的製剤はインフリキシマブが圧倒的に多かった。
その結果、分割使用による生物学的製剤の削減額は3133万円となり、1年間にオーダーされた生物学的製剤の必要薬剤費3億4424万円の9.1%に上ることが明らかになった。削減額の内訳を見ると、レミケードの必要バイアル数3793本うち、分割使用により削減できたのは389本、削減額は3129万円と、削減額のほとんどをレミケードが占めていた。
また、アクテムラは必要バイアル数381本のうち1本のみが削減でき、削減額は4万6000円にとどまった。その他の生物学的製剤については、分割使用によって薬剤費を削減できたものはなかった。
これらのことから、生物学的製剤の分割使用によって年間約3100万円の薬剤費が減少し、医療費削減につながっていることが明らかになった。同センター薬剤科は、調査期間内に実施した化学療法の約半数でレミケードが使用されており、レミケードのオーダーが同じ日に集中していたことが削減額の大きさにつながったと分析している。