QOLを著しく低下させる月経困難症を研究
東北大学は12月3日、妊娠前に月経困難症があった女性は、妊娠中に心理的ストレスを抱えていたり、新規に心理的ストレスを発症しやすかったりすることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院婦人科学分野の渡邉善助手、東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の目時弘仁教授らのグループによるもの。研究成果は、「Journal of Affective disorder」(電子版)に掲載されている。
画像はリリースより
月経困難症は、多くの非妊娠女性が罹患し、症状から生活の質を著しく低下させる疾患で、近年、増加傾向にある。身体的症状のみならず精神状態にも影響することが知られており、周産期においては産後うつとの関連も示唆されている。その一方で、これまで妊娠中の母体の精神状態への影響について調べた研究はなかった。
母体の周産期メンタルヘルスに妊娠前の月経状況が関与
研究グループは、2011年~2014年にかけて日本で行われたエコチル調査の全国データから、妊娠初期~中期に精神的ジストレスを有していなかった妊婦87,102人を対象とし、その後妊娠中期~末期における精神的ジストレスの有無を調査し、妊娠前の月経困難症との関連を解析した。
その結果、9,264人(全体の10.6%)の妊婦が妊娠前に月経困難症を有しており、さらに1,638人(全体の1.9%)の妊婦は、その症状が重度だった。妊娠初期~中期の段階で精神的ジストレスを有していない妊婦のうち、1,870人(2.1%)が、妊娠中期~末期になって精神的ジストレスを抱えるようになっていた。さらに妊娠前の月経困難症の重症度でみると、月経困難症が無かった妊婦の精神的ジストレス罹患率が2.1%だったのに対して、妊娠前に軽度および重度の月経困難症を患っていた妊婦の罹患率はそれぞれ2.6%、3.6%と高いことがわかった。
また、妊娠期間中に精神的ジストレスを有するようになるリスクを解析した結果、妊娠前に月経困難症が無かった妊婦と比較して、月経困難症を有していた妊婦では、その症状の重症度に伴い、段階的にリスクが増大していたことが明らかになった。さらに、そのリスクと傾向は、妊婦の精神状態と関連性の高い精神疾患既往(うつ病や不安障害など)や社会経済要因(年齢、学歴、収入、嗜好など)、さらには月経困難症を引き起こしうる婦人科疾患(子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫)などを加味した検討においても高いままだった。
これらの結果から、妊娠前の月経困難症が妊娠中の母体精神状態に関連していることが判明。研究グループは「母体の周産期メンタルヘルスケアにおいて、妊娠前の月経状況を把握することは、これまで以上に重要視する必要性があると考えられる」と、述べている。
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