患者由来iPS細胞を駆使した治療薬探索手法で候補薬を同定
慶應義塾大学は12月3日、疾患特異的iPS細胞を用いた創薬技術を応用し新たに見出したALS治療薬の候補「ロピニロール塩酸塩」の安全性・有効性を評価するための第1/2a相医師主導治験を開始したと発表した。この研究は、同大病院神経内科診療科部長の中原仁教授、診療科副部長の高橋愼一准教授らが、同大医学部生理学教室の岡野栄之教授らと共に行っているもの。
画像はリリースより
ロピニロール塩酸塩は、英グラクソ・スミスクライン社でドパミンの構造をもとに創製・開発されたドパミン受容体作動薬。パーキンソン病に対する治療薬として、1996年に英国において承認されたのをはじめ、日本を含む多くの国で承認されており、日本における使用経験も数多く蓄積されている。1日1回の投薬で効果が持続する徐放錠もあり、同治験でも患者に負担が少ないとの理由から、この徐放錠が使用されている。
孤発性ALS患者の約70%に効果がある可能性
慶應義塾大学医学部生理学教室では、2016年にヒトiPS細胞を用いたヒト脊髄運動ニューロンの作製および治療薬探索の実験手法を開発。これを用いて、健常者由来およびALS患者由来の血液細胞から作ったiPS細胞を誘導して脊髄運動ニューロンを作製。すでに薬として使用されている1,232種類の化合物の中からALS病態の改善を狙ったドラッグスクリーニングを実施した。その結果、脳内移行性や副作用を含む安全性などを考慮した上で、ロピニロール塩酸塩を最適なALS治療候補薬として同定した。実験では、家族性ALSの患者(一部の遺伝子異常を除く)のみならず、ALSの大多数を占める孤発性ALS患者の約70%に効果がある可能性が示されたという。
研究グループは「本治験は、ALS患者に対する当該薬剤の安全性と効果を確認する目的で実施され、今後、有効な治療法に乏しかったALS患者への適用が期待される。また、同治験は世界初のALS患者に対するiPS細胞創薬の成功事例になる可能性を秘めている」と述べている。
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