高血糖により障害される血管内皮機能
兵庫医科大学は11月3日、高血糖による血管炎症が引き起こされる分子メカニズムと糖尿病性血管合併症の制御につながる新たな標的因子を発見したと発表した。この研究は、同大糖尿病・内分泌・代謝内科の小山英則主任教授、三好晶雄大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は「FASEB Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
糖尿病患者の予後には、心筋梗塞、脳梗塞などの血管合併症が深く関与する。同患者の血管内皮機能は障害されており、その機序に高血糖がかかわることが知られている。
これまでに研究グループは、高血糖による細胞障害(糖毒性)にかかわる受容体RAGEが、動脈硬化、メタボリックシンドローム、心血管系予後に関与することを明らかにしてきた。
RAGEの過剰発現でTNF-αによる炎症シグナルが亢進
研究では、アデノウイルスを用いた血管内皮へのRAGEの過剰発現により、炎症性サイトカイン(TNF-α)による炎症シグナルが亢進し、炎症機転が増幅された。その一方、血管内皮特異的にRAGEを過剰発現したトランスジェニックマウスにおいて、TNF-αなどによる炎症誘導は、RAGEの切断(shedding)を誘導し、TNF-αによるRAGE sheddingはJNK活性化によるマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)9と、小胞体ストレスにかかわるATF4によるADAMの10誘導により引き起こされることが明らかとなった。
これらの結果から、持続する高血糖刺激が血管炎症を惹起し血管合併症発症に関与すること、さらに血管の炎症増幅がRAGE切断・放出により高血糖と炎症の悪循環にブレーキをかける仕組みが存在すること、炎症によるRAGE切断のフィードバック調節の存在とその機序が世界で初めて解明された。研究グループは「本研究により、高血糖による血管炎症が惹起される分子機序、さらに糖尿病性血管合併症の制御につながる新たな標的因子を見出すことができた。今後、糖尿病性血管合併症の予防法開発に寄与するものと期待している」と述べている。
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