不明だった小児のエナメル質形成不全有病率の地域間差
富山大学は11月26日、小児のエナメル質形成不全の割合は、西日本で高く、東日本で低い、“西高東低”の分布を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大地域連携推進機構地域医療保健支援部門と日本小児歯科学会の共同で行われたもの。研究成果は、「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載された。
画像はリリースより
永久歯の奥歯(第一大臼歯)と前歯(中切歯)のエナメル質は、出生直前後の時期に形成される。エナメル質形成不全では、歯の色が変化する審美的な問題や、むし歯になりやすいという問題があり、近年注目を集めている。しかし、全国規模の調査で、このエナメル質形成不全を持つ小児の割合(有病率)や、その地域間の差は明らかになっていなかった。
有病率は日本全体で19.8%、最も高い四国は28.1%
今回の調査は、日本小児歯科学会臨床研究推進委員会が、2015年10月から、2018年1月の間に、全国47都道府県の388歯科施設の協力を得て行ったもの。対象者は、7歳から9歳の健常児童4,985人で、日本小児歯科学会認定小児歯科専門医による診察と質問票を用いて実施し、エナメル質形成不全の情報などが完全であった4,496人を分析の対象とした。
分析の結果、エナメル質形成不全の有病率は、日本全体で19.8%であった。地域別では、北海道(14.0%)、東北(11.7%)、関東信越(18.5%)、東海北陸(19.3%)、近畿(22.3%)、中国(19.8%)、 四国(28.1%)、九州(25.3%)であり、全体として西高東低の地域差が認められた。最も高い四国は、最も低い東北の2.4倍になる。
エナメル質形成不全は、妊娠中から乳幼児期までの歯の形成時期の種々の要因によって起こるとされており、乳歯の形成不全は早産や栄養障害、妊娠中の抗生物質の服薬などが、永久歯の形成不全は感染症、栄養障害、乳歯のむし歯や外傷などが考えられる。研究グループは、「今後、エナメル質形成不全の西高東低の地域差が発生する背景について、詳細な研究が望まれる」と述べている。
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・富山大学 ニュースリリース