免疫細胞の性質で決まると考えられている皮膚炎のなりやすさ
京都大学は11月28日、アトピー性皮膚炎や乾癬が起こる新概念として「上皮-免疫微小環境」を提唱すると発表した。この学説は、同大大学院医学研究科皮膚科学の大日輝記講師、椛島健治同教授らの研究グループによるもの。国際学術誌「Nature Immunology」オンライン版にて掲載された。
画像はリリースより
従来、アトピー性皮膚炎や乾癬など皮膚炎になりやすいかどうかは、免疫細胞の性質で決まると考えられていた。その一方で、皮膚トラブルには、皮膚表面の角質バリアの性質や善玉菌と悪玉菌の構成、また皮膚の感覚神経の働きが大きく影響することが明らかになりつつある。しかし、これらの要因と炎症との関わりの大部分は、個別に研究が進められていて、必ずしも全体像を説明しようとするものではなかった。
体表面から0.2mmほどの微小環境
研究グループは、皮膚を場とする免疫の働きが、上皮の微小環境との関わりによって影響を受けることで、さまざまな炎症性の病気が起こったり長引いたりするのではないかと考察。これまでの知見をまとめることで、アトピー性皮膚炎と乾癬という代表的な皮膚疾患が起こる仕組みを、以下のように説明することに成功したという。
(1)皮膚には、毒物やカビなど、体外のさまざまな有害な因子を感知して、それぞれを追い出すのに最適の反応を引き起こす仕組みがあり、この仕組みは主に体表面から0.2mmほどの微小環境が担っている。
(2)この仕組みに偏りが起こると、皮膚表面の上皮細胞と免疫細胞の相互作用で炎症のループが回り始め、悪玉菌の影響や感覚神経のはたらきも結果的にこのループを通ることで炎症に影響を与える。
(3)この仕組みを明らかにすることで、新しい治療につながる可能性がある。
研究グループは、この新概念を「上皮-免疫微小環境(EIME)」と命名。今後はこのEIMEが肺や腸など皮膚以外の臓器でも病気の起こりやすさやその性質に影響を与えるかどうか、その仕組みが注目される。これらの仕組みを明らかにすることで、これまでの免疫細胞を標的とする治療以外に、EIMEを標的とする新しい治療が生み出される可能性があり、研究グループは、「免疫やアレルギーの研究者だけではなく、生物学や数学、工学など、さまざまな分野の研究者にこの概念を理解してもらうことで、医療や科学の発展に貢献したい」と述べている。
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・京都大学 研究成果