アレルギー予防に重要な抗原に対する乳児期の感作予防
国立成育医療センターは11月27日、妊娠マウスに抗IgE抗体を注射すると、生まれたマウスが長期間IgE抗体を作らなくなることを発見したと発表した。この研究は、同研究センター研究所の斎藤博久所長補佐、森田英明アレルギー研究室長らの研究グループによるもの。1966年にIgE抗体を発見したことで有名な故・石坂公成博士(2018年7月逝去)らとの共同研究である。研究成果は、米国アレルギー喘息免疫学会の公式機関誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」にて公開されている。
画像はリリースより
アレルギー疾患の患者数は増え続けており、現在では国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれている。現在、一旦発症したアレルギー疾患を完全に治す治療法は存在しないため、アレルギー疾患の発症を抑制する方法の開発が期待されている。
アレルギー疾患の大半は、乳幼児期にアトピー性皮膚炎/湿疹を発症し、各種抗原に対するIgE抗体の獲得が全ての引き金となり、最初に食物アレルギー、幼児期以降に気管支喘息・花粉症を発症するという過程をたどることが知られている。したがって、乳児期のさまざまな抗原に対する感作を予防することが、アレルギー疾患の発症予防に最も重要であると考えられている。
妊娠マウスに妊娠中期・後期に1回ずつ抗IgE抗体を投与
今回研究グループは、根本的なアレルギー疾患の発症予防法として、乳児期に抗原に対するIgE抗体を作らせない方法の開発を目指し、検証を行った。
まず、妊娠中のマウスに妊娠中期および妊娠後期に1回ずつ、抗IgE抗体あるいはControl抗体を投与。生まれてきた仔マウスに対し卵抗原(OVA)をアジュバンドとともに投与・感作して、OVAに特異的なIgE抗体の産生能に対する効果を検討した。その結果、妊娠中のマウスに抗IgE抗体を投与すると、仔マウスのOVA特異的IgE抗体の産生を抑制することが判明。さらに、この抑制効果は、生後6週のマウスまで持続することがわかったという。その一方、OVA特異的IgG抗体の産生やOVA特異的なT細胞の反応には、影響を与えないことも明らかになったとしている。
これらの結果から、妊娠中に母親に抗IgE抗体を投与すると、生まれてきた仔においてIgE抗体の産生のみを長期間抑制できることが明らかになった。研究グループは「この方法は、根本的なアレルギー疾患の発症予防法になり得る可能性がある」と述べており、今後の研究に期待が寄せられている。
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・国立成育医療センター プレスリリース