フォシーガ、心不全による入院または心血管死のリスク17%低下
アストラゼネカ株式会社と小野薬品工業株式会社は11月26日、都内でSGLT2阻害剤フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の大規模な心血管アウトカム試験であるDECLARE-TIMI58試験に関するメディアセミナーを開催。日本糖尿病学会理事長で東京大学大学院医学系研究科糖尿病・生活習慣病予防講座特任教授の門脇孝氏と、日本循環器学会代表理事で東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授の小室一成氏が講演した。
東京大学大学院医学系研究科糖尿病
・生活習慣病予防講座特任教授
門脇孝氏
フォシーガは、成人2型糖尿病患者の食事、運動療法の補助治療としての血糖コントロールの改善を適応として、1日1回経口投与で単剤療法または併用療法の一環として使用されるSGLT2阻害剤。2018年11月現在、日本において同剤の心血管イベント、心血管死、心不全の抑制、慢性腎臓病治療薬としての適応はない。
DECLARE-TIMI58試験は、アストラゼネカが行った無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験。心血管疾患の既往歴を有する患者だけでなく、複数の心血管リスク因子を有する2型糖尿病患者を対象に実施され、日本を含む世界33か国882施設から17,000例超の患者が登録された。
同試験の結果、主要評価項目のひとつである心不全による入院または心血管死の複合評価において、フォシーガ群はプラセボ群に対して、有意に17%のリスクを減少した(4.9%vs.5.8%;ハザード比[HR]0.83[95%信頼区間(CI):0.73-0.95],p=0.005)。心不全による入院または心血管死の減少は、心血管リスクを有する患者群ならびに心血管疾患の既往歴を有する患者群を含むすべての患者群で一貫して認められたという。もうひとつの主要評価項目である主要心血管イベント(MACE)において、フォシーガ群はプラセボ群に対して、7%のリスク減少で、統計学的な有意差は認められなかった(フォシーガ8.85%vs.プラセボ群9.45%;HR 0.93[95%CI:0.84-1.03],p=0.17)。また、これまでに確立されたフォシーガの安全性プロファイルと一貫した結果が確認されたとしている。
一次予防の幅広い患者を対象にした試験結果として評価
東京大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
小室一成氏
SGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験には、DECLARE試験の他に、エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME試験、カナグリフロジンのCANVAS Programがある。門脇氏は、「3つの心血管アウトカム試験では、心血管疾患リスクを持つ患者割合が異なる」と解説。CANVAS Programでは、複数の心血管リスク因子を有する患者、いわゆる一次予防患者の割合が34%(3,486例)、EMPA-REG OUTCOME試験では対象を二次予防患者限定としていたのに対して、DECLARE試験では一次予防患者の割合が59%(10,186例)だった。門脇氏は、同試験について「私共が日々診ている患者像に非常に近い患者をリクルートした試験」とし、同試験の結果については「一次予防の幅広い患者を対象にした(今回の)試験結果は、治療が一歩進むためのエビデンスとなった」と評価した。
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では、「SGLT2阻害薬は心血管病既往のある2型糖尿病患者の心不全予防に有効であるが、一次予防症例や後期高齢者などでの有効性については今後の課題である」とされている。小室氏は今回の試験結果を踏まえて「急性・慢性心不全診療ガイドラインの変更の必要もあると考えている」とコメント。門脇氏も、あくまでも私見としつつ「(診療ガイドラインで)もう少しつっこんで薬剤について示す可能性もある」と話した。
▼関連リンク
・アストラゼネカ株式会社
・小野薬品工業株式会社