認知障害や脳梗塞の危険因子である大脳白質病変
宮城教育大学は11月27日、脳MRIで検出される白質病変を引き起こす新たな機序を解明したと発表した。この成果は、同大保健管理センターの橋本潤一郎教授、東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌学分野の伊藤貞嘉教授と、オランダ・VU大学医学センターのBerend E. Westerhof博士との共同研究によるもの。研究成果は、米国心臓協会(AHA)の学会誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」電子版に掲載されている。
脳MRI検査(T2強調画像)で大脳白質にみられる点状・斑状~融合状の病変は白質病変と呼ばれ、微小血管障害の現れであるといわれている。大脳白質病変は、認知障害や脳梗塞の危険因子であることが知られており、その多くが加齢や動脈硬化に伴って発症する。しかし、その原因は不明だった。
研究グループはこれまで、心臓や脳、腎臓を含む主要臓器の高血圧性障害に、中心大動脈の硬さや血行の状態が深く関与することを報告してきていた。
頸動脈の収縮後期波高と収縮初期波高から白質病変を予測
今回、研究グループは、高血圧患者を対象とした臨床研究データを詳細に解析。その結果、大動脈の血行の状態に由来する頸動脈の拍動性血流が、大動脈硬化に伴って大きく変化し、脳の微小血管障害を引き起こしていることを発見した。
画像はリリースより
研究では、頸動脈の血流を非侵襲的な超音波検査を用いて記録し、脈波の波形において特徴的な2つのピーク(収縮初期および収縮後期ピーク)が認められることを確認。さらに、収縮後期波高と収縮初期波高の比(増大係数:AIx)が、加齢や大動脈の硬化度と密接に関連することが判明した。また、大脳白質病変の存在を、他のさまざまな危険因子とは独立に予測することを発見。今回の研究で用いた血流波形のAIxは、従来用いられてきた血圧波形のAIxに比べて、的確かつ早期に血管の加齢変化や大脳の白質病変を予測することを世界に先駆けて証明したとしている。
今回の研究によって、加齢や大動脈硬化に伴う脳微小血管障害の新たな発症メカニズムが明らかになり、大脳白質病変において頸動脈の収縮後期血流拍動が重要な役割を担うことが示唆された。研究グループは「今後本研究に基づいて、血行動態の改善に基づく認知障害や脳卒中の新たな予防法の開発につながることが期待される」と述べている。
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・宮城教育大学 プレスリリース