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【医療薬学会】入退院支援、薬剤師の介入必須-円滑な患者地域移行がカギ

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2018年11月28日 AM10:30


■「入院時加算」も追い風に

地域包括ケアシステムの完成に向け、入院前から退院後までスムーズな患者支援が求められる中、事前に薬剤師が持参薬を確認して薬に関連した手術中止を回避するなど、薬剤師の早期介入が欠かせなくなっている。2018年度診療報酬改定では、入院を予定している患者への服薬中の薬の確認などを評価する「入院時支援加算」が新設され、入退院支援を一層強化していく流れを後押しする格好となった。23日に神戸市内で開かれた日本医療薬学会年会では、患者の入退院支援を積極的に行ってきた医療機関の取り組みが紹介され、薬剤師が専門性を発揮して介入を行う必要性を共有。加算目的ではなく、患者が住み慣れた地域で生活するための体制作りに加算を活かすようクギを刺す声も出た。

入院時支援加算は、入院を予定している患者に入院前の外来で入院中に行われる治療の説明や服薬中の薬の確認などを実施し、支援を行った場合の評価として新設され、退院時に1回200点を算定できることになった。

医師の鬼塚伸也氏()は、前職の長崎みなとメディカルセンターで管理者として入退院支援を行ってきた取り組みを紹介した。同センターでは、2012年6月に入院支援センターを設立。16年4月には医療連携センターと統合し、今年4月には「患者総合支援センター」(みなみさぽーと)に発展し、入院前から退院後までの患者支援を一貫して強化してきた。

鬼塚氏は、同センターの管理者としての経験から、薬剤師が持参薬をチェックし、医師、看護師、薬剤師が患者の薬歴情報を共有することの重要性を強調。「それぞれが役割を果たすことが大事」と述べた。

同センターの患者数は、12年の701人から昨年には5365人まで増加。持参薬の管理数も昨年で2668件と増え続けている。鬼塚氏は、術前中止薬の内服などによる手術中止の減少といったメリットを挙げた上で、薬剤師の役割として院内、地域薬局との密接な連携が重要と指摘。「医療連携の重要な一員であることを自覚して業務を行ってほしい」と求めた。

その上で、新設された入院時支援加算に言及。「入院患者を地域で支えるために加算がある」とし、「患者が住み慣れた地域で生活するための体制づくりに加算の活用を」と強調。センターでは持参薬管理の比重が大きくなっているとし、「医薬品の管理、指導に専門性を発揮することが目指す方向性ではないか」と薬剤師の役割を展望した。

看護師の足羽孝子氏(岡山大学病院)は、08年から運営している周術期管理センターにおいて、手術が決まった外来時点から患者を支援するチーム医療を展開してきた取り組みを紹介した。

足羽氏は、「予防介入に先行投資することが肝になる」と述べ、入院前に薬剤師が事前に面談し、患者が服用している薬の情報を聞き取ることの重要性を強調。全身麻酔や手術を行う上で問題になる薬を確認するなど、外来時の薬剤師の介入により、薬剤関連の手術中止が減少した成果を挙げ、「メディカルスタッフの負担軽減につながっていることが一番大きい」と述べた。

奥貞智氏(神戸市立医療センター中央病院薬剤部)は、同院の入院前準備センターで薬剤師が入院前から退院までのシームレスな薬物療法を行う流れを構築し、早期介入を実践してきた事例を提示した。

同院では入院前から予定入院患者の約4割に薬剤師が介入し、今年6月の1カ月間、入院前に薬剤師が対応した患者で手術中止となったケースがなかったことを紹介した。

奥貞氏は、「入院早期から退院後の地域での生活に向けた支援をいかにスムーズに移行できるかが大事」と強調。「従来型の治す医療から、生活支援型の医療に転換していくことが役割の一つになる。そのために加算ありきではなく、病院全体のマネジメントの中で入退院支援の取り組みを行うべき」とした。

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