従来法では感染初期の判定が困難、識別精度も実施者に依存
大阪大学は11月21日、ナノポアセンサとAI技術を融合させた新しい1粒子検出法を用いて、インフルエンザウイルスの型(A型、B型、A亜型)を高精度に識別することに成功したと発表した。この研究は、同大産業科学研究所の川合知二特任教授、筒井真楠准教授、有馬彰秀特任助教(常勤)、鷲尾隆教授と、東京工業大学物質理工学院応用化学系の大河内美奈教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に公開されている。
画像はリリースより
現在、臨床現場におけるインフルエンザウイルスの型判定は、1対1の抗原抗体反応を基盤とするイムノクロマトグラフィーで行われている。この手法は簡便である一方、その識別精度が人に依存する点や、感染初期における低濃度なウイルス条件では検出が困難になるという課題がある。
粒子1個で72%、20個以上では95%以上の精度
今回研究グループは、極薄窒化シリコン膜中に開けられたナノ細孔(ナノポア)を通るイオン電流を計測するナノポア法を用いて、インフルエンザウイルスを1個レベルで検出。機械学習によるパターン認識技術をイオン電流シグナルの解析に応用した。その結果、インフルエンザウイルス粒子1個で72%、20個以上の検出で95%以上の精度で型判定が可能であることを実証したという。
この研究成果により、判定する人の能力に依存しない、感染初期でのインフルエンザの型判定が可能になり、患者の負担軽減やウイルス感染の拡大抑止が期待される。また、同手法はインフルエンザのみならず、あらゆるウイルス種への応用が可能であることから、従来の1種類のウイルス同定のみに限定されている現状の検査キットの性能を大きく超える、多項目ウイルス検査の実現も期待されるとしている。
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