iPS細胞を用いた臨床試験開始など治療の進歩進む
パーキンソン病は、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害を主症状とする神経疾患。日本国内の患者数は約16万人と、高齢化に伴い患者数は増加している。近年ではiPS細胞を用いた臨床試験も開始した。アッヴィ合同会社は11月21日にメディアセミナーを開催。順天堂大学大学院医学部研究科神経学教授の服部信孝氏らが講演を行った。
順天堂大学大学院医学部研究科神経学教授
服部信孝氏
レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の症状の日内変動(ウェアリングオフ現象)に対する治療のひとつとして、「デュオドーパ(R)配合経腸用液」(一般名:レボドパ、カルビドパ水和物)がある。胃瘻を造設し専用のチューブを通じて、空腸投与用レボドパ・カルビドパ水和物配合剤を直接空腸に16時間持続投与する仕組みだ。
パーキンソン病は、進行するとウェアリングオフと呼ばれる「オフ」状態と「オン」状態が交互に出現し、「オフ」状態では動作が困難な状態となる。デュオドーパを用いたレボドパ経腸療法は、この「オフ」時間を減少させることが期待されている。服部氏は、レボドパ経腸療法の導入によって、「かなりウェアリングオフ現象が消えた」症例を紹介。高い治療効果が期待できるとした。また、レボドパ経腸療法では、胃瘻造設の前にデュオドーパを経鼻的に空腸投与することで治療効果を体験できる。服部氏は、このことも「非常に大きなポイント」とした。一方で「胃瘻造設によるビタミンB群欠乏の可能性も指摘されている」と解説した。
ガイドライン改訂で「早期パーキンソン病治療の推奨」CQ設定
また、日本神経学会は2018年5月15日に「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」を発行した。これは、2011年以来7年ぶりの改訂となる。今回のガイドライン改訂点のひとつに、「早期パーキンソン病治療の推奨」に関するCQの設定がある。同ガイドラインでは、CQ「早期パーキンソン病は、診断後できるだけ早期に薬物療法を開始すべきか」に対して、「早期パーキンソン病は、診断後できるだけ早期に治療開始することを提案する(GRADE 2C、推奨の強さ「弱い推奨」/エビデンスの質「低」)」としている。
服部氏は、このパーキンソン病早期治療の推奨について触れ、「早期パーキンソン病の治療は、特別の理由がない場合、診断後できるだけ早期に治療開始するほうが良い。ただし、早期介入による不利益に関する十分なエビデンスが無いため、治療の開始に際してはその効果と副作用、コストなどのバランスを考慮する必要がある」と解説した。
一方で、パーキンソン病治療において地域格差があることも指摘。ガイドラインの啓蒙が十分に行き届いておらず、今後全国で医師向けの講義を行うことも検討中とのこと。服部氏は「日本神経学会全体で取り組むべき課題だ」とコメントした。
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