日本人における咽頭扁桃、口蓋扁桃の成長曲線を調査
東京医科歯科大学は11月19日、日本人における咽頭扁桃、口蓋扁桃のサイズの標準値を年齢区分ごとに計測し、成長曲線が従来の概念と異なることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科咬合機能矯正学分野の小野卓史教授、石田宝義助教らと、川崎医科大学医学部の神田英一郎学長付特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」オンライン版にて公開されている。
画像はリリースより
現在、さまざまなジャンルで活用されている人体における成長曲線は、約80年前にScammonらが提唱したもの。リンパ型、神経型、一般型、生殖型の4種類に分類されており、そのなかでもリンパ組織は、成人を100%とすると、幼少期に約200%まで過成長した後、成人に近づくにつれてサイズが100%に減少していくと報告されている。そのため、現在は「リンパ組織である咽頭扁桃や口蓋扁桃は、他のリンパ組織と同様に一度肥大し、成人に近づくにつれ小さくなり、いずれは消失する」という前提で、患者に説明し治療を行うことが多いという。矯正歯科において、咽頭扁桃と口蓋扁桃の大きさと、顎顔面発育との関連は古くから着目されているものの、「日本人における咽頭扁桃と口蓋扁桃の成長曲線」について調べた報告はこれまでなかった。
咽頭扁桃、口蓋扁桃の大きさ、6歳頃からほとんど変化なし
研究グループは、側面頭部X線規格写真を用いて、成長期の日本人における咽頭扁桃と口蓋扁桃の年齢区分別標準値を求め、咽頭扁桃、口蓋扁桃の成長パターンを縦断的に調査した。側面頭部X線規格写真は撮影装置が一定の距離に固定されており、再現性が高く、硬軟組織のサイズの定量的な評価に適している。これより咽頭扁桃と口蓋扁桃の大きさの標準値を求め、成長曲線を導き出した。
その結果、咽頭扁桃、口蓋扁桃の成長曲線は、従来の「リンパ組織では幼少期に約 200%まで過成長した後、成人に近づくにつれてサイズが 100%に減少していく」というリンパ型の成長曲線とは異なり、6歳(小学校低学年)から成人のような長期的な観察期間では僅かに萎縮していくだけで、「咽頭扁桃、口蓋扁桃の大きさは6歳ごろからほとんど変化がない」ことが解明された。研究グループは「この発見は従来の認識を変え、歯科のみではなく、耳鼻咽喉科、呼吸器内科などのさまざまな医科領域において応用可能であると考えられる」と述べている。
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