脊髄損傷を対象とする再生医療等製品が初めて登場する。薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会が21日、ニプロが承認申請した脊髄損傷に伴う神経症候と機能障害の改善を効能・効果とする「ステミラック注」について、再生医療等製品として製造販売することを了承した。神経や血管に分化する間葉系幹細胞を患者から採取し、体外で培養・増殖後、患者に点滴静注することで脊髄損傷による疾病を改善するもの。再生医療等製品では、初の先駆け審査指定制度対象品目となり、国内と欧米において脊髄損傷を対象とする再生医療等製品も初めて。厚生労働省は、早ければ年内にも製造販売を承認する予定だ。
脊髄損傷は、交通事故や転倒などで発症し、身体の麻痺や臓器不全に陥る。毎年、約5000人が新たに発症し、国内患者数は10万人以上に上る。標準治療はリハビリが位置づけられている。
ステミラックは、神経や血管に分化する能力を持つ間葉系幹細胞を利用したもの。患者から採取した骨髄液中の間葉系幹細胞を体外で培養・増殖後、患者に点滴静注し、脊髄損傷に伴う神経症候や機能障害を改善する。脊髄損傷を効能・効果とする再生医療等製品は国内、欧米で共に承認されていない。また、再生医療等製品では初の先駆け審査指定制度対象品目となる。
ただ、投与対象については、機能障害の尺度を示す5段階のうち、▽運動・知覚機能がない▽知覚機能を残しているが、運動機能がない▽運動機能が残っているが、一定基準よりも筋力がない――の項目に該当する外傷性脊髄損傷患者に限定する。
厚労省は、これらに該当する外傷性脊髄損傷患者の国内治験の結果、13例中12例で1段階以上の改善が見られたことから、一定の有効性が期待できると判断。副作用も確認されていないとしたが、評価症例数が少なく有効性については推定にとどまるとして、条件・期限付承認とした。
承認条件として、承認後に改めて行う製造販売後承認申請までの期間を7年間に設定し、期間中にステミラック投与群とリハビリのみの患者群を対象に比較評価を行うこととしている。