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【さいたま市民医療センター】政令市で統一プロトコル加速-市薬剤師会と疑義照会で合意

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2018年11月21日 AM10:00


■服薬情報提供書も運用開始

人口130万人を擁する大都市、埼玉県さいたま市で地域ぐるみの薬薬連携が急速に進んでいる。公設民営のさいたま市民医療センターと地元のさいたま市薬剤師会は、事前に取り決めた項目について院外処方箋の発行時に疑義照会不要とする合意書を締結し、疑義照会不要時の連絡については、市薬剤師会が作成した統一様式の服薬情報提供書(トレーシングレポート)を用いる運用を来月から開始する。同センターでは、昨年9月から院外処方箋への検査値表記を開始。来月には疑義照会不要の運用と共に、FAXコーナーを設置して面分業を後押しする方針で、矢継ぎ早に地域連携の取り組みに着手している。大都市の医療を支える基幹病院と市薬剤師会の323薬局が地域で統一したプロトコルに基づき、本来業務に集中することにより、地域全体の医療の質向上につなげたい考えだ。

右下から時計回りに、さいたま市民医療センターの石田副院長、野村薬剤科長補佐、さいたま市薬剤師会の野田理事、堀野会長

市薬剤師会が基幹病院と疑義照会不要の合意書を交わすのは、昨年のさいたま赤十字病院に続き2件目。疑義照会を不要とするのは、▽成分名が同一の銘柄変更(変更不可の処方を除く)▽内用薬の剤形の変更▽内用薬における別規格製剤がある場合の処方規格の変更▽無料で行う半錠、粉砕あるいは混合▽無料で行う一包化調剤▽貼付剤や軟膏類の包装・規格変更▽その他合意事項――の7項目。

前回の合意書を見直し、銘柄変更に当たって価格を考慮する記載を削除した。その他の合意事項として、新たにビスホスホネート製剤の週1回、月1回製剤の処方日数変更を可能とすることや経口糖尿病薬のα-グルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬の用法について、食後等の処方を食直前に変更可能とする事項を細則に盛り込み、最新版に更新した。さらに、疑義照会不要時の連絡は、市薬剤師会が作成した統一様式の服薬情報提供書をFAXすることも明記した。

今回の合意を主導した同センターの医師、石田岳史副院長は、「数年前まで薬剤師会との連携はなかったが、院外処方箋への検査値表記を始める中で、もっと距離を縮めながら、多職種連携の形にする最も分かりやすい取り組みの一つと考えた」と背景を説明する。これまで門前薬局と疑義照会不要に関する口頭合意はあったものの、昨年のさいたま赤十字病院と市薬剤師会の合意、院外処方箋への検査値表記の開始も踏まえ、地域全体に連携を広げることが不可欠と判断した。

同センターの院外処方箋発行率は94.73%(10月実績)。そのほとんどを門前の2薬局で応需している。1日外来患者数は約312人で1日164枚程度の院外処方箋が出ていることになるが、来月からはFAXコーナーを設置し、市薬剤師会の事業として運用を開始する。これにより、院外処方箋の一層の面展開が期待され、今回の合意書の効力が市薬剤師会の323薬局に拡大することになる。

特に注目されているのが、市薬剤師会が作成した統一様式の服薬情報提供書の運用である。病院と薬局の連携ツールとして全国的に服薬情報提供書の活用が広がる中、疑義照会不要時の連絡にとどまらず、残薬確認や後発品への変更などの情報を市内全域の薬局からフィードバックする基盤作りと位置づけている。

さいたま市薬剤師会の野田政充理事は、「統一様式の服薬情報提供書を標準化していければ、服薬情報等提供料の算定や残薬調整につながっていくのではないか」と述べ、将来を見据えた布石と位置づける。FAXコーナーの設置も「相当に大きい」として、基幹病院をサポートする薬局制度を立ち上げたことを説明。院外処方箋への検査値表記、疑義照会不要の合意、服薬情報提供書の運用をはじめ、地域連携を加速している基幹病院側の取り組みに市薬剤師会としても十分な対応を行っていきたい考えだ。

来年3月には、地域医療機能推進機構(JCHO)さいたま北部医療センターの新病院移転に合わせ、合意書を締結する方向だ。これまで基幹病院が主導する形で合意が交わされてきたが、今後は市内の7基幹病院全てと合意を締結するため、市薬剤師会からも積極的にアプローチしていくことにしている。

■合意書を患者の医療向上に‐薬局からエビデンス構築へ

基幹病院として急速に連携を進めていることについて、石田副院長は「病院や診療所では地域との連携がキーワードになっており、薬学教育も6年制になって確実に薬剤師のプロフェッショナリズムが上がっている。これからの高齢化社会で医療ニーズが高まる中、薬剤師にもっとプロらしい仕事をしてほしいし、そのツールとして、こうした合意に基づく取り組みをどんどん活用していきたい」と話している。

同センター薬剤科の野村淳科長補佐も、「処方箋を受ける薬局薬剤師が疑義照会を行うに当たって、薬物治療に影響を与えない部分でも多くの時間が割かれているのが現状で、そこを変えていかなければ新たな業務も進まない」と問題意識を示し、「いま多くの病院で薬局と疑義照会不要に関する合意が交わされているが、政令指定都市のさいたま市で進めていくことに大きな意味があるのではないか」と意義を強調。「病院薬剤師も入院患者を地域に橋渡しするという意識に変えていかなければならない。今回の合意書、服薬情報提供書が、その架け橋になってくれるのではないか」と期待感を示す。

一方、市薬剤師会の堀野忠夫会長は、未入会の薬局の問題を指摘。「市内の3分の1の薬局が未入会であり、基幹病院を受診した患者が未入会の薬局に処方箋を持ち込む可能性は高い。その時に合意内容を知らないと病院、薬局がお互いに困るケースが予想される」と懸念を示しつつ、「最終的に七つの基幹病院と合意できれば、他の医師と関係も良好になり、さいたま市そのものの医療も変わってくるだろう」と前を向く。

石田副院長は、「病院ごとに違う合意書を運用するのは現実的でない。市内で同じプロトコルを運用していくことが重要」と強調した上で、「患者さんのアウトカムを良くするために医師と薬剤師が連携するのは当然。大事なことは、合意書によって医師、薬剤師の業務が楽になったということで終わっては意味がなく、最終的には患者さんに対する医療の質向上につなげなければならない」と目指すべき方向性を語った。

野田氏も「将来的には合意書によるメリットを患者さんに実感してもらわなければ意味がない。薬剤師会としてもエビデンスを構築し、アウトカムを公表していきたい」と話している。

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