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慢性心不全につながるミトコンドリアの過剰分裂を抑制する既承認薬を発見-生理研

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2018年11月16日 PM12:15

いくつかの心疾患では心筋老化が顕著に増加

生理学研究所(NiPS)は11月14日、ミトコンドリアの過度な分裂が慢性心不全の原因のひとつである心筋細胞の早期老化を誘導する原因となることを明らかにしたと発表した。また、ミトコンドリアが過剰分裂するメカニズムを解明し、既承認薬の中からミトコンドリア過剰分裂を抑制する薬として「」を同定した。この研究は、同研究所および九州大学大学院薬学研究院の西田基宏教授と九州大学大学院薬学研究院の西村明幸講師らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Science Signaling」電子版に掲載される。


画像はリリースより

日本人の死因として第2位の心疾患のなかでも、最も多いのが心不全だ。心不全患者の5年生存率は未だ50%であり、この50年間で10%程度しか改善されておらず、これまでの治療薬とは異なるコンセプトに基づいた薬の開発が必要とされている。

研究グループは、心不全を増悪化させる要因として心筋細胞の早期老化現象に着目。心筋梗塞などいくつかの心疾患では、心筋老化が顕著に増加しており、この心筋細胞の早期老化現象が心不全増悪化の一因であることを明らかにしていた。

心筋梗塞モデルマウスにシルニジピンを投与、心機能が改善

ミトコンドリアは、エネルギー産生の中心を担う細胞内小器官で、分裂と融合を繰り返すことで自身の品質(機能)を維持している。ミトコンドリアの品質低下は、細胞のエネルギー代謝機能異常を招き、重篤な病態や疾患を引き起こす原因になる。

今回、研究グループは、心筋細胞の早期老化が起こるメカニズムについて検証を行い、心筋ミトコンドリアの異常分裂がその引き金となっていることを解明。心筋梗塞後の心筋細胞では、ミトコンドリア分裂制御分子「 (Drp1)」が異常活性化することで、ミトコンドリア分裂が誘導されていたという。また、アクチン結合タンパク質「Filamin」がDrp1と疾患特異的に複合体を形成し、これがDrp1異常活性化の原因であることを発見した。

そこで研究グループは、ミトコンドリア異常分裂を抑制する化合物を既承認薬の中から探索。高血圧症治療薬であるシルニジピンを同定した。シルニジピンは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の1つ。アムロジピンなど別のカルシウム拮抗薬には、ミトコンドリア分裂抑制作用が見られなかったことから、シルニジピンは従来のカルシウム拮抗作用とは異なる薬理作用(Drp1-Filamin複合体抑制)を介してミトコンドリア異常分裂を抑制することが判明した。さらに、心筋梗塞モデルマウスにシルニジピンを投与すると心筋老化が抑制され、心機能が改善することも明らかにしたとしている。

今回の研究により、心筋梗塞時に形成されるDrp1-Filamin複合体がミトコンドリア異常分裂を介して、心筋細胞の早期老化現象を引き起こすことが明らかになった。研究グループは、「今後、Drp1-Filamin複合体形成を阻害する薬が、新たな心不全治療法の開発に貢献するものと期待される」と述べている。

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