細菌や真菌など微生物が付着しやすい粘膜調整材
広島大学は11月14日、新入れ歯用粘膜治療材「無機系抗菌剤CPC担持モンモリロナイト」を開発したと発表した。この製品は、同大大学院医歯薬保健学研究科の阿部泰彦准教授、北海道大学大学院歯学研究院の横山敦郎教授および産業技術総合研究所健康工学研究部門の槇田洋二研究グループ長らによるもの。同製品は、10月9日付けで製造承認された。
画像はリリースより
要介護高齢者に対する在宅歯科医療では、入れ歯の治療が最も多く、中でも入れ歯で傷ついた粘膜の治療に粘膜調整材がよく使用されている。粘膜調整材は、細菌、真菌などの微生物が付着しやすいため、口腔の環境を悪化させ、抵抗力のない高齢者の全身への持続的な感染源となり、誤嚥性肺炎発症のリスク要因となっている。
こうした問題を解決するために、微生物が付着し難く、汚染や劣化を防止できる粘膜調整材の開発が求められている。
CPCの徐放で持続的な抗菌効果を発揮
阿部准教授ら研究グループは、2015年に、医療品・化粧品などの分野で広く応用され、安全性が確認されている「塩化セチルピリジニウム(CPC)」の抗菌活性を利用し、CPCが徐放することで持続的な抗菌効果を発揮する「無機系抗菌剤CPC担持モンモリロナイト」を開発。さらにこれを応用し、日本医療研究開発機構(AMED)平成27年度医工連携事業化推進事業「在宅歯科医療における口腔感染症や誤嚥性肺炎の予防機能を有した抗菌性粘膜調整材の開発・事業化」において、複数の研究機関や企業と産学連携コンソーシアムを形成し、共同で事業化を進めていた。
そして今回、製品の表面上でカンジダ菌や黄色ブドウ球菌、ミュータンス菌の増殖を2週間に渡って持続的に抑制する粘膜調整材をメディカルクラフトン株式会社が開発。10月9日付けで厚生労働大臣に製造販売が承認された。同製品のような、口腔に薬剤が徐放するコンビネーション製品(薬物・機器組み合わせ製品)は日本で初めてだという。
なお、同製品の発売は、保険適用の手続きを経て、2019年春を予定している。
▼関連リンク
・広島大学 研究成果