日本のアカデミア主導の国際共同臨床試験
国立がん研究センターは11月12日、進行または転移性乳がん患者を対象に、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤「パルボシクリブ」の医師主導治験(試験略称: NCCH1607、PATHWAY、UMIN試験ID: UMIN UMIN000030816、ClinicalTrials.gov 登録番号: NCT03423199)を開始したと発表した。この試験は、国がん中央病院が主導して、日本12施設、韓国6施設、台湾3施設、シンガポール2施設が参加するアジア圏での国際共同医師主導治験。参加4か国において試験実施準備が完了し、すべての国で患者登録を開始したという。
CDK4/6は、細胞周期の調節に主要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こす。パルボシクリブは、このCDK4/6を阻害する新規の経口分子標的薬であり、CDK4および6を選択的に阻害して、細胞周期の進行を停止させることで、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。同剤は、米国をはじめ世界85か国以上で承認されている薬剤で、日本においても2017年9月に承認された。ただし、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されており、タモキシフェンとの併用の有効性や安全性は確立されていない状況だ。
タモキシフェンとの併用投与における無増悪生存期間を評価
今回の試験は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行または転移性乳がん女性患者を対象とし、2年間で180人の患者を登録する、パルボシクリブのプラセボ対照ランダム化比較第3相試験。同試験の主要目的は、パルボシクリブとこの患者集団でよく使われる内分泌療法であるタモキシフェンとの併用投与と、プラセボとタモキシフェンの併用投与における無増悪生存期間を評価することである。
同試験は、Pfizer Inc.との共同研究であり、同社から研究費と治験薬パルボシクリブの提供を受けている。製薬企業との共同研究の形式をとり、日本では医師主導治験として、海外では同院が製薬企業と同様な治験依頼者としての役割を担う形で実施する国際共同医師主導治験となる。治験の枠組みで行うことの大きな目的は、標準治療の確立にとどまらず、将来、薬事承認の取得について規制当局と協議することが可能となることだ。また、国立がん研究センターの特徴を活かし、同試験で4か国から得られた検体の分析・解析を同センターの研究所で実施することで、トランスレーショナル研究の発展にも役立てる仕組みとしている。
国立がん研究センター中央病院では、現在アジア地域でのネットワーク構築に特に力を入れており、今回の取り組みを発展させて国際共同試験を数多く手掛けることで、アジア圏での新薬を含めた治療開発を強力に推進することを目指している。
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・国立がん研究センター プレスリリース