がんに対する免疫応答を誘導するがんワクチン
徳島大学は11月13日、辺縁帯B細胞を標的とした新規がんワクチンを開発することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学研究部薬学域薬物動態制御学分野の清水太郎特任教授、石田竜弘教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The Journal of Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
がんに対する免疫応答を誘導するためのがんワクチン開発は、これまで長年行われてきた。従来のがんワクチンでは、抗原提示細胞の代表格である樹状細胞へとがん抗原を送達する試みがなされてきた。研究者らのグループはこれまでに、薬物送達システムの1つであるPEG修飾リポソームをマウスに2回繰り返し投与すると、2回目投与PEG修飾リポソームが脾臓辺縁帯に存在する辺縁帯B細胞に選択的に取り込まれることを明らかにしている。
樹状細胞と同様に抗原提示細胞として働く辺縁帯B細胞
今回、研究グループは、辺縁帯B細胞が樹状細胞と同様に抗原提示細胞として働くことに注目し、辺縁帯B細胞を標的としたがんワクチン研究に取り組んだ。その結果、空のPEG修飾リポソームを投与した後にがん抗原を封入したPEG修飾リポソームを投与すると、がん抗原が辺縁帯B細胞に効率的に取り込まれ、抗原特異的な細胞傷害性T細胞が誘導されることが判明。さらに、モデルがん細胞を移植したマウスに対して同手法を用いて免疫を行ったところ、がんの治療効果が確認されたことから、研究グループは辺縁帯B細胞を標的とした新規がんワクチンを開発することに成功したとしている。
今回の研究ではモデル抗原を発現させたがん細胞を用いてがん治療効果を確認したが、今後は内在性のがん関連抗原を発現したがん細胞を用いてがん治療効果を確認する予定。さらに、現状では辺縁帯B細胞にがん抗原を送達するために2回の投与が必要であるが、リポソーム製剤の改良により1回の投与で抗原を送達できるように検討中で、最終的に樹状細胞を標的としたがんワクチンに代わる新規がんワクチン治療法の確立を目指すとしている。
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・徳島大学 研究成果