COL4A1/COL4A2遺伝子とは別の責任遺伝子の存在を想定
横浜市立大学は11月12日、脳小血管病の新たな疾患責任遺伝子を発見したと発表した。この研究は、同大附属病院遺伝子診療科・宮武聡子講師、同大学術院医学群遺伝学教室・松本直通教授らと、スイス・チューリッヒ大学、浜松医科大学、聖隷三方原病院、豊橋市民病院、森之宮病院、東京大学、重井医学研究所などとの共同研究によるもの。研究成果は「Annals of Neurology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
脳小血管病は、脳梗塞、脳出血、白質脳症などをきたす、比較的頻度が高い疾患で、脳卒中全体の最大50%を占めるともいわれている。そのうち約5%は遺伝性と考えられており、若年発症、家族内発症などが特徴だ。
COL4A1/COL4A2遺伝子は、IV型コラーゲンのα1/2鎖をコードする遺伝子。遺伝性脳小血管病の疾患責任遺伝子として知られ、孔脳症や脳出血、白質脳症などを引き起こす。しかし、臨床的にCOL4A1/COL4A2関連疾患を疑われる症例で遺伝子解析を行っても、変異が同定されるのは20~30%程度であるため、別の責任遺伝子の存在が想定されていた。
COLGALT1遺伝子の劣性変異を発見
研究グループは、臨床的にCOL4A1/COL4A2関連疾患を疑われた2例に全エクソーム解析を実施。その結果、新たにCOLGALT1遺伝子の劣性変異を見出した。2例はいずれも、新生児期~小児期に孔脳症、脳出血、白質脳症を発症していたという。
COLGALT1遺伝子は、コラーゲンタンパク質の翻訳後修飾を行う酵素であるコラーゲンβ(1-O)ガラクトシルトランスフェラーゼ1をコードし、コラーゲンの成熟化に関わるとされる。この酵素の活性が低下することで、細胞内のIV型コラーゲンの産生、および細胞外分泌が減少。IV型コラーゲンは脳内の血管の構成要素であるため、これが減少すると血管がもろくなり、脳卒中を引き起こしやすくなると考えられる。
今回の研究によって得られた知見は、脳小血管病の早期診断に貢献できる可能性を示唆するもの。研究グループは「病態解明が進めば、脳小血管病の新しい治療法の開発にも寄与することが期待される」と述べており、今後はモデル動物を作成し、さらなる病態解明と治療法の探索を行う予定としている。
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・横浜市立大学 プレスリリース