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武田薬品・ウェバー社長 シャイアー買収で「日本発バイオ医薬品のリーダーを目指す」

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2018年11月13日 PM02:00

統合後の研究開発費は少なくとも4000億円規模に

武田薬品株式会社のクリストフ・ウェバー代表取締役社長 CEOは10月31日、同社の2019年3月期第2四半期決算発表の会見で、2019年上半期に買収が予定されているアイルランドの製薬企業・シャイアーに関連し、買収後の姿について「価値重視で研究開発主導の日本発バイオ医薬品のリーダーを目指す」と発言。加えて、買収は「武田のトランスフォーメーションを加速させるもの。武田の名前、価値を維持し、その価値が変わるものではない」と買収後も武田薬品が主導権を握る意思を強調した。なお、買収を決議する臨時株主総会については1月18日までに開催する方針を明らかにした。


武田薬品株式会社
クリストフ・ウェバー代表取締役社長 CEO
(撮影:村上和巳)

一方、従来から指摘されている財務的なリスクなどに関連し、買収完了後ののれん代が4~4.4兆円、無形資産が6.3~6.7兆円、純有利子負債が5兆4520億円になるとの試算を公表。「のれん、無形資産の現存リスクは低いと考えている」と述べ、巷で囁かれる財務不安説を一蹴した。

ウェバー社長は「研究開発型製薬企業として革新的な医薬品を患者に届けるという我々のビジョンは一貫している。ただ、そのためには様々なスキル、スケールが必要。この買収が様々なノウハウ、研究開発投資のスケールを提供する」と説明。そのうえで「誠実」「公正」「正直」「不屈」をモットーとする「タケダイズム」に触れ、「武田の長い歴史を基礎として出来上がった強みともなる価値観で、我々が重視するもの。シャイアーの従業員にもこの価値観を理解してもらう」と述べた。

統合後の研究開発については、従来から武田薬品が重点化してきた疾患領域のがん、神経精神疾患、消化器系疾患にシャイアーが有する希少疾病を加えた4領域とし、これに従来から取り組んでいるワクチン、さらにシャイアーが世界的プレゼンスを有する血漿分画製剤を含めた「4+2」体制で望むと説明した。また、研究開発拠点については、従来から同社が推し進めてきた研究開発拠点ごとに1つのTAを担当する方針を維持していくとし、統合後の研究開発費は少なくとも4000億円規模になるとの見通しを示した。

また、財務リスクについてウェバー社長は「シャイアー製品の予測評価は、製品別に慎重に行った。競争プレッシャーが強くなる血友病領域も、その点を十分考慮した」と明言。投資適格性の指標となる有利子負債を自社の営業キャッシュフローで返済する能力を示す純有利子負債/EBITDA比率(一般に2.0倍以内を投資適格と判断)が統合後は4.8倍になるとの見通しを初めて示した。また、この比率については、過去の両社の業績実績のみに基づくと、2021年3月時点で3.3倍、2023年3月末時点で2.1倍になるとの見通しも公表。想定されるノンコア資産の売却(想定売却総額1兆1360億円)も加えると、同比率は2021年3月時点で2.9倍、2023年3月末時点で1.7倍と急速に改善すると繰り返し強調した。

統合後の新エクゼクティブチーム発表、武田側から18人、シャイアー側から2人

統合後の新エクゼクティブチームについては、ウェバー社長も含む、アメリカ人6人、日本人5人、フランス人2人、イギリス人、イタリア人、オーストラリア人、カナダ人、ケニア人、ドイツ人、デンマーク人各1人から成る合計20人の陣容も公表。チームのうち18人は武田薬品側から選出し、シャイアー側からグローバルプラズマディライブドセラピービジネスユニット(PDTBU)担当のジュリー・キム氏(アメリカ人)、ペイシェントバリュー&プロダクトストラテジー担当のカミラ・ソエンダービ氏(デンマーク人)の2人がチーム入りすることが決定した。

同日公表された2019年3月期第2四半期決算については、売上高が0.1%減の8806億1100万円、営業利益が26.6%減の1719億5600万円、純利益が26.7%減の1264億8900万円となった。減収減益は、前期に長期収載品の売却や子会社だった和光純薬の売却分があった反動が中心。

製品別では、同社の大黒柱でもある潰瘍性大腸炎(UC)・クローン病(CD)治療薬「エンティビオ(国内製品名:エンタイビオ)」(日本では、2018年11月7日よりUC治療薬として発売)が32.4%増収の1284億円となり、その他にも消化性潰瘍等治療薬「タケキャブ」、多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロ」、大うつ病治療薬「トリンテリックス」などの主力品がおおむね伸長。他方で、2017年にアメリカで特許が失効した多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」の減収幅が当初予想よりも少なかったことから、2019年3月期通期業績予想に関しては売上高1兆7500億円(前期比1.2%減)、営業利益2689億円(同11.2%増)、当期利益(親会社の所有者帰属分)1895億円(同1.4%増)といずれも5月の2018年3月期決算発表時よりも上方修正した。(村上和巳)

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